都会で増えるネズミ
被害と対策
ネズミがかじったホッチキスの針用ボックス
排泄物で食中毒
住みにくい環境作りを
最近、東京、大阪、名古屋など都会でネズミの被害が増えているという話をよく耳にする。ビル街だけでなく、住宅地にも進出している。衛生、経済上、人間に多大な被害をもたらすネズミ。駆除するにはどうしたらよいのか。東京都の新宿区保健所を訪ねて聞いた。
その害 習性をよく知るべき ネズミの害は、衛生上と経済上に分けられる。 衛生上の害としては、@尿や糞などの排せつ物にはサルモネラ菌などの食中毒菌がいることがあるAネズミに寄生するイエダニが、ネズミが死んだ際に巣やネズミから離れて人を刺す、などが挙げられる。経済上は、家屋や家具、食品類をかじるのはもちろん、ガス管や電線をかじって停電や火事の原因を作る。電話線やコンピューターのケーブルをかじり、機能をマヒさせたりもする。 ネズミを駆除するには、ネズミの習性をよく知る必要がある。 「最近増えているクマネズミは高い学習能力を持っています」と、新宿区衛生部衛生課生活衛生係の高取亨係長はいう。粘着シートに捕らえられた仲間を見ると、「危ない」ということがインプットされ、次からは避けて通るようになるそうだ。クマネズミが同じわなにかかる率はわずかで、警戒心も高い。 また、人間の食べる物なら基本的に何でも食べるので、最近のネズミはグルメ志向。例えば、同じりんごでも1個100円の物でなく、200円の物に手をつける。 繁殖力は「ネズミ算」 現在、日本にいるネズミは約32種。中でも増えているのが東南アジア産のクマネズミだ。体長は15〜23センチ、体重は150〜250グラム。天井裏やビルの上層階に生息する。 よく知られているのはドブネズミだ。原産地はアジア南西部とされ、日本に来たのは江戸時代というから歴史が古い。体長は22〜26センチ、体重は200〜500グラムと、クマネズミよりは大きい。その名のとおり、人家の床下、下水溝、地下道や地下街など水気の多い所に住んでいる。 体長5〜10センチ、体重12〜30グラムと小型のハツカネズミは狭いすき間に住む。 ネズミの繁殖力は「ネズミ算」と言われるほどすさまじい。例えば、ドブネズミ、クマネズミなら寿命は約3年。年間分娩回数は5〜6回で、ドブネズミの場合は1度に平均9匹、クマネズミの場合は平均6匹の子を産む。単純計算でも年間30から45匹ずつ増えていくことになる。 しかも、ネズミは「地球が滅亡するまで存在し続ける」と言われるほど強い生命力を備えている。 駆除の方法 整理整とん、食品は密閉 駆除の方法としては、毒エサによる方法がまず考えられる。そのためには、好みのエサを知り、餌付けをすることから始める。材料としては、サツマイモ、トウモロコシ、油あげ、ソーセージ、チーズ、パン、リンゴ、バナナなど。これを1〜1.5センチの大きさに角切りし、発泡スチロールのトレーなどに置いてねずみの活動しそうな場所に配置する。ネズミは夜間に活動するので、寝る前に仕掛け、翌朝回収する。毎日新鮮なものを準備すること。 最初は数種類のエサを置き、好物を調べる。食べるエサが分かったら、それを集中的に置く。初日は3個、2日目は6個、3日目は12個という具合に倍ずつ増やす。というのも、ネズミはファミリーを形成していて、力の強い順に食べるので、エサにありつけない輩もいるからだ。エサがあまるまでこの作業を続ける。これまでに1週間ほどかかるという。 エサが余り出したら、いよいよ殺そ剤の登場。エサに殺そ剤を混入する。殺そ剤には、急性と慢性があるが、最近では急性のノルボルマイドがよく使われる。これを食べると2日から3日で死ぬといわれる。 1つのファミリーが絶滅したら、次のファミリーが侵入するのを防ぐ必要がある。そのために、金網や金属タワシなどでネズミの侵入路を防ぐことが大切だ。 とくに、台所の配管やダクトなどは侵入路になりやすい。クマネズミは2センチ程度のわずかなすき間でも通り抜けてしまうので、穴があれば要注意だ。また、ネズミが通る場所は黒くなっている。このラットサインが分かれば、巣のありかを知ることもある程度は可能だ。 そして、高取係長が強調するのは「環境駆除」。「大切なのはネズミの住みにくい環境を作ること。そのためには整理整とんを怠らず、エサになるような食べ物を放置しないことです」 ネズミは、人の手の届かない所に巣を作るが、時として押入れやタンスの裏に作ることもある。きちんと整とんされていない倉庫なども巣になりやすい。 ティッシュペーパー、雑巾、ビニールなどは巣作りの材料に利用されるので、これを運ばれないようにすることも大切だ。 食品類はふた付きの容器に収め、夜間は放置しない。生ごみ類は速やかに処理し、ふた付きのゴミ箱に入れるよう心がける。 ネズミの駆除は基本的には自分でやるか、専門業者に相談してほしい。(文聖姫記者) |