朝鮮学校への助成金増額

兵庫県下への各自治体
組織あげての努力実る

神戸市は1000万円アップ
姫路市、保護者助成金新設
川西市も倍の14万円に

 兵庫県と県下の地方自治体は3月の議会で、来年度(2001年4月)から朝鮮学校に対する教育助成金を大幅に増額することを決定した(表参照)。日本政府は朝鮮学校に対して一貫した差別政策を取っているが、教育助成における差別は象徴的存在だ。総聯組織や朝鮮学校では、その獲得運動に力を注いできたが、兵庫県の同胞たちは、「阪神・淡路大震災」が起きた年に「兵庫県外国人学校協議会」を結成。公開授業、バザーなどを開き、民族教育の正当性を訴えてきた。今回の助成金増額は、こうした絶えまない努力が実を結んだ結果といえよう。(張慧純記者)

 

兵庫県下の地方自治体が増額、新設した助成金

(いづれも年額)

兵庫県 外国人学校教育振興費補助金
1人当たり  7万5000円→7万7000円
神戸市 外国人学校助成金
3800万円→4800万円
姫路市 保護者助成金制度を新設
初級部で1人当たり  最高7万5290円
川西市 保護者助成金
1人当たり  7万円→14万円
西宮市 就学補助金
1人当たり  1万2000円→7万円

外国人学校と協力

公開授業など日本市民の理解も

 このたび増額された兵庫県の振興費補助は、人件費などの経費を対象にしたもの。朝鮮学校関係者は、都道府県に対して使途を限定しない経常費補助金制度の設置、増額を求めているが、兵庫県の振興費補助は私立の約4分の1の水準というものの、大阪府、神奈川県とならび全国でトップレベル。他の都道府県が財政難などを理由に制度の設置や増額を拒んでいる状況から、兵庫県が増額を決定した意義は大きい。

 また、姫路市が新たに設置した保護者助成金制度は、朝鮮学校保護者の経済的負担を軽減するための市独自の措置で、すでに東京23区などで実施されているが、全国的にその数は少ない。兵庫県では西宮市、宝塚市、川西市、尼崎市が支給しているが、このたび姫路市が制度を新設したことで、他の自治体にもこの動きが広がる可能性が出てきた。

 この間、総聯兵庫県本部は本部に設置されている民族教育対策委員会を中心に、全組織をあげて教育助成金運動に取り組んできた。

 まず県に対しては、他の外国人学校と手を取り合い、運動を推進。「阪神・淡路大震災」が起きた1995年の7月、県下の外国人学校とともに「外国人学校協議会」を結成、共同で補助金の増額を求めてきた。

 県議会に対しては受験資格と助成充実を求める請願書を提出、98年12月に請願書が採択され、これを受けて県議会は、助成充実と大学受験資格の付与を求める意見書を日本政府あてに提出し、外国人学校に対する差別是正を求めた。また、同協議会は、国連人権委員会に代表も送り、外国人学校が差別されている不当性を訴えた。

 各地域でも朝鮮学校を中心に各市に対して運動を展開。毎年一斉に行政に要望書を提出して助成金アップを求めるとともに、議員、市民らを対象にした公開授業、バザーなどを定期的に開催し、民族教育の正当性と理解を訴えてきた。県内には、東神戸、尼崎、阪神、明石などに日本市民による、「朝鮮学校を支える会」が結成されているが、日本市民が声をあげたことも、行政を動かす原動力となった。

 日本弁護士連合会(日弁連)が朝鮮学校への差別是正を勧告(1998年2月)した後も、勧告の実施を促す運動を精力的に展開。伊丹市議会は日本政府が日弁連勧告を受け入れ、朝鮮学校の処遇改善を実施することを求める意見書を採択し(98年6月)、首相、文部大臣(当時)に提出している。

ビジョン立て中断なく

黄成吉・県教育会

 大多数の自治体は財政状況が厳しいことを口実に助成金の支給、増額を拒んでいる。だからこそ、息の長い運動が必要だ。大事なことは@地域の実情に合った運動方針を立てA運動を中断なく進める――ことだ。

 このたびの助成金増額は民族教育の正当性が認められた結果だが、まずは、日本市民に朝鮮学校が強いられている差別の実態を正確に知らせなければならない。現場を見せることが大事で、子供たちが生き生きと学ぶ姿を見れば、民族教育の必要性は伝わる。朝鮮学校を訪れた人が声を上げ、それが世論となり、行政や議会を変えることにつながる。

 日弁連が朝鮮学校の差別是正を勧告したように、日本政府には民族教育を法的に保障する義務がある。要はこれをどう実現させていくかだ。運動を全国レベルで発展させるためにも、日本政府に差別を是正させる知恵と方法論を考え、行動することが急務だ。兵庫は他の外国人学校と手を取り合うことで、朝鮮学校が置かれた差別的な状況を広く訴えることができた。

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