望郷 民族への思い込めて
朝大美術科韓東輝教授の退官記念展
韓東輝教授 |
「農楽」 |
朝鮮大学校・教育学部美術科の韓東輝教授がこの春、定年退職するにあたり、「韓東輝先生退官記念展」が14〜20日、ルネこだいら(東京・小平市)で開かれた。韓教授にとって3回目の個展となる。
展示場には、韓教授が45年間にわたって描いてきた数多くの油絵と水彩画の中から思い出深い作品、また、韓教授に師事した美術科の第32期生(今年卒)8人が描いた油絵を含めた約60点が展示されていた。 朝鮮の名山である白頭山の美しい自然を描いた「白頭高原」「天池の春」などの風景画や、花、果物などを描いた静物画は色彩の鮮やかさが際立ち、人物画はそれに加えて躍動感がみなぎっている。 韓教授とは約20年来のつきあいになるという金真順さん(武蔵村山市、72)は、「韓先生の作品からは、人間の優しさが伝わってくる。絵を描くことで人生をまっとうしようとする韓先生の心意気は素晴らしい」と語る。 韓教授の作品には、1〜2世だけでなく、3〜4世の若い教え子らも「望郷の念を強く感じる」というほどに祖国と民族への熱い思いが込められている。 韓教授が生まれ育った朝鮮部落のバラック小屋や、「祖国統一」と朝鮮語で書かれた手作りの朝鮮凧、男児が民族衣装を着てチャンゴをたたきながら踊る姿など様々なものが描かれているが、中でも干した明太の絵が多い。 韓教授はこれに関し、「明太は朝鮮の家庭で昔から親しまれてきた食べ物。民族性を育んでいくためには母語を学ぶことがもちろん大切だが、私は食文化の継承も欠かせないと思っている」と述べた。 長年の教職から退く韓教授だが、今後の目標は「故郷で展示会を開くこと」と、意気揚々と語っていた。(順) 韓東輝 1935年9月21日、神奈川県横浜市生まれ、65歳(2世)。東京朝鮮中高級学校、朝鮮大学校を卒業後、文芸同東京支部副委員長、朝鮮美術研究所部長、文芸同中央美術部部長として制作活動に励むかたわら、58年4月から94年3月に神奈川中高、東京中高、東京第4初中などの美術教師を歴任。また、68年から朝大の美術科講師、94年から専任教員、98年から教育学部の教授を務めた。今年3月、同大を退官。 |