改正された社会保険について
金由美(社会保険労務士)
高額治療費一律から計算式に
70歳以上は一割負担
社会保険は、年金保険と医療保険に分かれるが、今年の1月1日から医療保険の健康保険法と老人保健法などの一部が改正された。
改正理由としては、高齢化が進むに伴い医療費が増大する中で、医療保険の財源がひっ迫した状況にあるということだが、結果的には、医療保険(勤務先で加入する政府管掌健康保険や組合管掌健康保険及び自営業者が加入する国民健康保険)を支払っている人や、老人保健加入者に一層の負担を強いるものとなった。 まず、第1にサラリーマンが支払う毎月の健康保険料(給料から天引き)だが、最低ランクの健康保険料を支払っている人の場合のみ、ワンランク上のおおむね6.5%増の健康保険料を支払うことになる。 第2に2000年4月より、介護保険料が40歳から64歳までのサラリーマンから健康保険料と一緒に徴収されるようになったが、この介護保険料の額が、昨年のおおむね1.8倍になる。 また、自営業者等が加入する国民健康保険料と一緒に支払う介護保険料(対象者は40歳以上の人)は、今年の4月分より増額となる。 第3は、医療保険に加入している人すべてにかかわってくる問題だが、入院された時に支払う1日の食事療養費に係わる標準負担額が、760円から780円に変更となり20円アップとなった(低所得者世帯等を除く)。 第4も同じく医療保険加入者すべてに該当するが、高額療養費(入院などによって1ヵ月に支払う医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その額は払い戻される)の自己負担限度額が昨年までは特別な場合を除いて一律に6万3600円(低所得者世帯等を除く)だったが、今後はこの自己負担限度額が、計算式によって、かかった医療費に応じて6万3600円から増額していく。 また一定水準以上の上位所得者(注1)であれば、自己負担限度額の6万3600円が12万1600円となる。これによって世帯毎の医療費の払戻金が間違いなく減額されることになる。 第5は、老人保健法の改正である。70歳以上(寝たきりの人は65歳以上)の人は、老人保健に加入しているが、その医療費の自己負担額が増加した。外来で病院にかかった時、従前は月4回まで1日530円だったが、それが1ヵ月に3000円を限度に医療費の一割の負担となり、「定額制の診療所」では、月に4回まで1日800円の自己負担となる。 また、入院の時は、従前は1日1200円だったが、1ヶ月3万7200円を限度に医療費の一割負担となった。今回の老人保健法の改正は、とくに無年金状態で収入がない在日同胞にとって一層の厳しさを強いられるものとなった。 第6は、勤務先の社会保険に加入する人には傷病手当金が給付されることがあるが、これが4月1日より一部改正される。 傷病手当金を受給しつつ退職後、老年厚生年金などの老齢給付を受けている場合は、傷病手当金が調整されることになる。 以上のほか、プラス側面として、少子化対策といえるが、育児休業期間中の事業主負担分の社会保険料が全額免除される。これまでは、勤務先の社会保険に加入する人が出産後、育児休業をとる場合に届出をすれば通常、産後八週間を経過してから出産した子が1歳に達するまでは、本人の負担する社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の支払いが免除されていたが、それが事業主負担分の社会保険料も、社会保険事務所に申し出た月分からすべて免除されることとなった。 以上が改正内容となるが、今後も医療費を取り巻く財政状況悪化を理由に、高齢者等の医療費負担は増大されていくと思われる。在日同胞にも関わる問題だけに、注視していく必要があるだろう。 【注】@サラリーマンの場合、おおむね月の給料56万円以上A自営業者等の場合、おおむね基礎控除後の総所得金額が670万円以上 |