取材ノート
同胞社会の底力
人間がいきいきと活動するには、脳だけではなく、末端組織が元気でないとだめだという。頭で理屈ばかりこね、システム化を唱えても、肝心のそれを運営する人の動作がついてこなければ意味がないようにだ。心臓や、脳、内臓なども確かに重要だが、こうした中枢部分と同じように、手先、足元、指先など末端の毛細血管のことを忘れず、大事にすることが、日頃の健康にもつながるという。
今回、幾つかの同胞生活相談綜合センターを取材した際、ある相談員から、帰宅すると必ず、足を洗うことを日課にしているという話を聞いた。体の1番末端部分の足を丁寧に洗うことで、その日の疲れを癒すことができるというのだ。 支部の人たちと一緒に昼食をした折、センター運営の大変さを得々と聞かされた。だが、その表情からは、少しもしんどそうな気配はうかがえなかった。 確かに、価値観が多様化し、世代交代も進んでいる中で、運動を展開し、ひとつにまとめようということは、これまでよりも大変な作業かも知れない。だが、しんどいばかりではない。 千葉ではいまだに1週間に1度、98年に県本部で殺害された羅勲氏宅を訪ね、残されたオモニを激励しているという。神奈川では肩書きなど関係なく、皆が一緒に畑を耕し、その過程を通じて地域にさらに密着できたという話を耳にした。また、相談員になったことで、訪ねてくる同胞に、少しでも役立てたいと、徹夜で勉強をしているという話を聞いて、同胞社会の温かさや底力を見た思いだ。 日本社会で暮らすわれわれには、単純に語れない複雑な問題も横たわっている。だが、傘下の同胞らがいきいきしてこそ、組織が活性化する。そして同胞社会は、こういう人たちが、支えているのだと改めて痛感するのだ。(金美嶺記者) |