取材ノート

四国の民族教育


 2月初旬から3月初旬にかけて、東海、近畿、中国、四国、九州と、西日本地域へ5週間の長期出張に行き、先日、帰京した。

 職場の喧騒を離れ、見知らぬ土地で多くの同胞と出会い、話を聞いた。年度末の忙しいなか、記者の無理な取材依頼にも親切に応じてくれた同胞の皆さんには、「コマプスムニダ」(ありがとうございます)とただただ頭が下がる思いだ。

 最も印象的だったのが、2月18日にあった四国朝鮮初中級学校(愛媛県松山市)の創立55周年記念行事である。朝大生の時、教育実習でお世話になった、記者にとっては第2の母校のような存在だ。

 実習といっても8年も前の話。当時の教員は残っていないし、校舎裏の教員用寄宿舎は倉庫になっていた。初級部え1年生だった子は来春、中級部を卒業する。月日の経つのは早いものだと思いつつ取材に臨んだ。

 現地を見て驚かされたのが、集まった同胞の熱気だった。卒業生と在校生だけでなく、地元の同胞も続々駆けつけた。その数、延べ200余人。10年前に校庭に埋めたタイムカプセルの中身が発表されると、当時の可愛らしい「夢」の話に表情がほころび、昔話に花を咲かせる。すっかり「生徒の顔」に戻っていた。

 四国初中は愛媛、香川、徳島、高知の四県をカバーする。生徒数の減少、そして日本当局の差別政策による改善されぬ環境など、厳しい状態にあるが、そんな中でも、これだけ多くの同胞が集い、「私たちの母校、四国の民族教育を守ろう」と口にする。

 決して大きくはないし、設備も十分とは言えないが、同胞の手で守られている校舎で、21世紀の同胞社会を担う子供たちはのびのびと学んでいる。民族教育はここにも、しっかりと根づいていることを改めて確信した。

 記者も、当時の教え子と再会し、思わず顔がほころんだ。(柳成根記者)

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