そこが知りたいQ&A

南朝鮮の内閣改造の特徴は

統一・外交安保チームを一新/議席数優位確保の政治配慮も


  金大中大統領が先月26日に大幅な内閣改造を行った。今回の内閣改造の特徴は。

  南朝鮮の各紙が一致して指摘しているのは、「政治家出身長官が多い」こと。金大中大統領は27人の閣僚のうち、12人を新たに任命したが、そのうち5人が現役議員で、内閣全体で政治家は10人(現役議員8人)になる。今回の内閣改造には、「国会での数的優位を確保するために自民連と民国党を引き留めなければならない」(東亜日報社説)事情がありそうだ。

 金大統領が総裁を勤める民主党は、単独で議席の過半数を確保できない。そこで、自民連(金鍾泌名誉総裁)と連立を組んでいるのだが、その自民連に配慮したというわけだ。民国党は2議席しかないが、一応、民主党との政策連合を表明している。一応というのは、政策連合についての賛否が分かれているからだ。

 Q そのほかに特徴は。

  「金大統領の意中を良く知る側近を前面に立たせた(中央日報)」ことだろう。国情院(前安企部)の院長だった林東源氏を統一部長官に、長官ではないが朴智元前文化観光部長官を青瓦台(大統領府)の政策首席秘書に抜擢した。

 林東源長官は、南北対話の事実上の責任者として活動してきた。しかし、情報部の長が暗躍するのは、南北関係の透明性に好ましくないという批判があり、それが今回の統一部長官起用につながったのだろう。

 朴智元氏も青瓦台広報首席秘書、文化観光部長官時代から南北関係に関わってきたが、ハンピッ銀行の不正貸出事件の連るいで長官職を辞職、一審で一応、嫌疑なしということになって、今回の要職復帰となった。2人とも金大統領の側近中の側近と言われている。

 Q 統一・外交安保チームが一新されたが。

   統一部長官、外交通商部長官、国防部長官、国情院長が統一・外交安保チームと呼ばれているが、すべて入れ替わった。林東源氏の統一部長官起用については「対北政策の一貫性維持と透明性を高めるという次元で望ましい」(ハンギョレ)と、各紙とも評価している。

 民国党に所属する韓昇洙外交通商部長官は、金泳三政権時代の青瓦台秘書室長で、駐米大使、経済副総理を歴任した米国通。「韓昇洙議員を起用して外交安保チームのカラーを保守傾向の人士で構成したのは、保守・強硬性格のブッシュ外交安保チームを念頭に置いた配慮」(京郷新聞)と見られる。

 検察出身で国情院の第二次長(国内担当)だった辛建氏の国情院長起用には、「1部に国情院の国内政治関与幅が広がるのではという憂慮が出て」(ハンギョレ)いる。残りの任期2年を切った金大統領が、レイムダック(死に体)を防ぐために打った布陣というわけだ。

   先月31一日付の労働新聞が、金東信国防部長官の発言を非難したが。

  金東信長官が就任の辞で、朝鮮半島の安定と緊張緩和のためには、米国との「同盟と連合防衛体制」が不可欠で、政府の対北政策を「力で裏打ちすべきだ」と述べたことについて労働新聞は、理性をもった人物ならば行えない発言で、こうした行為は、外部勢力の拍子で踊る以前の対決時代の好戦勢力が働いたと指摘している。

   一方、朝鮮日報は、「送還直前の非転向長期囚に花束を渡した事実一つだけでも、彼(金東信)の軍統帥能力は致命傷を受けた」と言っている。

  新しい統一・外交安保チームに対する評価は。

  まだ実際に動いていないのでなんとも言えないが、カトリック大学の朴健栄国際学部長は次のように指摘している。

 「韓昇洙、金東信長官の抜擢は、対米関係のためだとマスコミは分析しているが、明言しておきたいことは、(対米)従順が協力をもたらすわけではないという点だ。韓米首脳会談のときに金大中大統領が国家ミサイル防御システム(NMD)と関連して謝罪したことは 典型的 な従順だ。大統領は米国の圧力を負担に思っているが、これは国内で超党的協力で克服すべきだ」

   内閣改造全般に対する評価は。

  新内閣が発表された翌日の各紙の社説を見ると、三つに分類される。

 好意的に評価したのは大韓毎日と連合通信で、大韓毎日は「改革の持続と国政安定を」と題し、「金大中大統領が断行した3.26内閣改造は、執権後半期の国政運営方向を持続的な改革と国政安定に置くことを示した」と書いた。ちなみに大韓毎日は、政府系の新聞と言われている。

 比較的客観的と思われたのは、ハンギョレと京郷新聞、中央日報で、「限界を抜け出せなかった 政治内閣 」「国政一新の転機とすべき」「和合よりも強硬を選んだ内閣改造」と題する社説をそれぞれ掲載した。

 批判的だったのは、東亜日報と朝鮮日報。「国政刷新にはほど遠い内閣改造」「内閣改造とDJ(金大統領)の時局認識」と題する社説で、それぞれ「国政は後回しにして政治勢力拡大に汲々」(東亜日報)、「他党との政治的連合のために長官の椅子を与え、専門性が要求される職に政治家を布陣させた徹底した『政治内閣改造』」(朝鮮日報)と非難した。

 参考までに言うと、朝鮮日報は金大中政権の発足当時から政府に批判的で、とくに最近、言論社税務調査に対して「財閥言論」と言われる東亜日報、朝鮮日報などが「言論弾圧」だとのキャンペーンを張っている。

  今回の内閣改造を非難する根拠は。

 A 各紙が一致して指摘しているのは、李漢東総理と陳念財政経済長官の留任だ。経済不振、健康保険の破綻など問題が山積しているにもかかわらず「野党の強力な更迭圧力を受けてきた李漢東国務総理と政策乱調を見せてきた経済チームが留任し、能力と前歴の面で一部に問題のある政界人士が起用」(京郷新聞)されたというわけだ。

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