経済と同胞商工活動の基礎を知る

同胞専門家のお勧め図書


  この春、高校や大学を巣立った「社会人1年生」を対象に、「経済入門」や「ビジネスマナー入門」といった特集が、多くの経済専門誌で組まれている。同胞青年の中にも、各地の朝鮮商工会や青商会、金融機関、同胞企業など、様々な職場で新たな一歩を踏み出す人は多いだろう。そこで、「フレッシャーズ(新人)がまず読むならこの1冊」という経済・ビジネス関連図書を、朝鮮大学校政治経済学部の呉民学講師と、在日本朝鮮人商工連合会商工部に紹介してもらった。

朝大政経学部講師 呉民学さん

「在日本朝鮮人商工連合会55年」/「日本経済読本」/「社会的共通資本」

 「商工団体や同胞企業で働く人には、まず『自分たちの歴史』を知ることから入ってほしい」と、呉さんが勧めるのが、「在日本朝鮮人商工連合会55年―朝鮮商工会半世紀の歩み―」(商工連発行、非売品、問い合わせは商工連か各地の朝鮮商工会へ)だ。

 同胞商工人が祖国解放後から今日まで、日本でどのように商売を営んできたか、豊富なデータをもって解説。「日本における同胞の商工活動の歴史を1から学べる決定版。同胞商工人も必読でしょう」

 金森久雄・香西泰編「日本経済読本」(東洋経済新報社発行、2200円=税別)は、第15版を重ねるベストセラー。日本経済の歩みとその仕組みを、平易な文章で解説している。

 「全ページの上段に用語解説を載せ、図表も多用するなど、ビギナーを念頭においた読み易さが徹底している好著です」

 宇沢弘文著「社会的共通資本」(岩波書店発行、660円=税別)。豊かな経営生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持するための、自然環境やインフラ、制度資本などの社会的装置を、同書では「社会的共通資本」と呼んでいる。その社会的共通資本を、農業や医療など身近なテーマから解説。「商売を通じて自分も人も豊かになろうという、ビジネスのルール、モラルを学べる。豊かな同胞社会を築くうえでのヒントが満載です」

商工連合会商工部

「デジタルな経済」/「会社は黒字で当たり前」/「日本国債」

 商工連商工部が「日本経済の実相をつかめる初心者向けの図書」として紹介してくれたのは、次の3冊だ。

 伊藤元重著「デジタルな経済」(日本経済新聞社発行、1500円=税別)は、「21世紀型の『デジタル日本経済』」で、経済の構造やビジネスのルールがどう変わるかを、情報技術(IT)を実際に取り入れた企業の事例をもとに検証した。

 「IT革命」が盛んに唱えられる現代の日本における、技術としてのITと企業との上手な付き合い方を説く。全ページの下段に用語解説を設けており読みやすい。

 中村広孝著「会社は黒字であたりまえ タナベ流経営の原理・原則」(プレジデント社発行、1600円=税別抜)。企業診断や経営コンサルティングを請け負う「タナベ経営」の取締役を務める著者が、入社17年間で得たコンサルティングの経験と実績をもとに、企業が長引く不況と厳しい経営環境を乗り切る方法を伝授する。

 「会社は赤字で当たり前」と捉える中小企業の経営者に喝をいれるとともに、会社を黒字に転換させるための条件と原則、企業運営の在り方、感性と創造性を養うコツを提示する。

 幸田真音著「日本国債」上・下巻(講談社発行、上・下巻とも1800百円=税別)。米国系投資銀行や証券会社の債券トレーダーなどを経験した著者が、日本の国債(国の借金)を取り巻くトレーダーや機関投資家ら様々な人々の関わり合いと人間模様を描いた経済小説だ。

編集部より

「日本・韓国・中国いま何時?」/「在日朝鮮人企業活動形成史」/「5グラムの攻防戦」

 本紙編集局で紹介するのは、次の3冊だ。

 車東鎭著「日本・韓国・中国いま何時?」(新幹社発行、1800円=税別)。

 日本のある評論家は青年むけの雑誌で、21世紀のビジネスマンが習得すべきことは英語、コンピューター、歴史であると言ったことがある。とりわけ歴史を知ることは各国のビジネスマンとのコミュニケーションを図るうえで必須の条件である。本書は経済のハウツーものではなく、カバン1つで世界を歩き回る若き韓国人ビジネスマンの21世紀の東アジア像を示したものだ。著者は言う。「20世紀は必ずしも中国を知らなくてもやっていけたかもしれないが、21世紀、新しいミレニアムは中国を知らずしては何も進まない時代になるであろう。21世紀の遠くない将来、その広大な土地と圧倒的な人口が人類の先端を極める日が来るだろう」。

 呉圭祥著「在日朝鮮人企業活動形成史」(雄山閣出版発行、2500円=税込)は、「在日本朝鮮人商工連合会55年」と同様、同胞商工人の歩みと企業活動の歴史を時系列を追って振り返っている。とくに商工人が日本当局による様々な弾圧に対し、商工活動を守り抜いてきた様子が記されている。

 姜誠著「5グラムの攻防戦 パチンコ30兆円産業の光と影」(集英社、1600円=税込)は、異業種参入や、プリペイドカードシステムの導入、郊外激戦区での「パチンコ戦争」など、パチンコ業界を取り巻く現状を、同胞ジャーナリストの著者がレポした。同胞商工人の基幹産業と言われる所以にも触れている。

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