春・夏・秋・冬

 モーツァルト(1756〜91年)が、父への手紙の中で名曲を作る秘訣について、「親しみやすいメロディーと少しばかりの新しさ」だと書いていたのを読んだ記憶がある。少々、異論を唱えたいが、天才に逆らう気持ちはない

▼3歳でピアノを弾き、5歳で作曲したというから、まさに神童だ。が、あまり幸せではなかったように思う。幼い頃から旅を強いられ、他の 大作曲家 からの嫉妬(しっと)に苦しみ、経済的にも恵まれなかった

▼彼ほどの天才ならば、自由奔放に曲を書けばよさそうなものだ。でも、 売れる 曲を作るために「親しみやすいメロディー」を書かなければならず、 気難しい評論家 のために「少しばかりの新しさ」を工夫しなければならなかった、というのが筆者の解釈だ

▼最近、日本ではモノが売れないという。安売り競争で採算が悪化し、それがさらに投げ売りを誘う悪循環が繰り返されている。そして失業と倒産の増大。これをケインズ経済学は、デフレ・ギャップと診断するが、経済理論では糊口をしのげない

▼ここで登場するのがモーツァルトの秘訣。親しみやすいメロディーをなじみやすい商品に置き換え、少しばかりの斬新さ(性能、デザイン)を加えれば、というわけだ。ちなみに売れ筋ナンバーワンの携帯電話は、単音だった着信音を3和音に、16和音にと徐々に 進化 させている

▼世の中、変わっても変わらないものがある。親しみやすさ=普遍、新しさ=変化。これをしっかりと見極めることが、変化する世の中でも成功する秘訣ではないだろうか。(元)

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