新宿同胞生活相談綜合センター 開設1周年セミナー
生活守る≠ウらにアピール
81件の諸問題を解決
18日に行われた開設1周年セミナー
昨年4月に開設された東京・新宿同胞生活相談綜合センター。4月18日、開設から1年を迎える集いが同センターで行われた。朴石夏委員長は、この間を振り返って「センターは、冠婚葬祭、高齢者、法律、経営問題など同胞社会の変化する環境と生活の多様化に合わせて、同胞の権利と生活を守るための地域の拠点として設立された。昨1年間、108件の相談を受け付け、81件を解決した」と語った。同日センターでは、自民党など3与党が今国会への提出をもくろんでいる「国籍法改正案」に関するセミナーを開催し、ジャーナリストの姜誠氏と同センター専門相談員の高英毅弁護士がそれぞれ発言した。
「日本国籍法改正案 毒入りまんじゅう」 姜氏は今回の国籍改正法案について「在日朝鮮人は、1952年にそれまで押し付けられた国籍を一方的に取り上げられた。だが、日本政府はその後、外国人として生きていくための制度的なものは一切保障しなかった。そうした状況が現在まで続く中で、国籍だけを与えるというのは、同化を強要する以外の何ものでもない」と述べ、「改正案は毒入りまんじゅう。外国籍のままでは生きにくいという社会的なシステムの中で、同胞は日本国籍取得においやられているのであって、今回の法案によって国籍選択の自由が与えられることにはならない」と、その危険性について指摘した。 さらに姜氏は、「南北間の往来が活発になり、朝鮮籍の在日同胞が南の現代サッカーチームに入団するという状況も生まれている。こうした人材は、総聯の民族教育がベースになっており、センターや商工会、青商会などがさらに連携を持って対応していくことが重要だ。今回の法案が通過すれば、そうした同胞のコミュニティーが大変小さなものになってしまう」と警鐘を鳴らした。 ◇ ◇ 続いて、同センターの専門相談員として、無料法律相談に当たってきた高弁護士が1年間の相談について振り返った。そして、大小様々な問題の解決に当たってきたが、心残りなこともあったと次のような事実に言及した。 新宿でビルを所有していた夫婦がそれを担保にバブル時代に改築したが、支払いが滞ってしまい、ローン会社に走った。その後、ブローカーが仲介に入り、結局そのビルだけでなく担保に入っていなかった自宅まで手放すことになったという。 高弁護士は、初めからセンターに相談に来てくれれば、「自宅くらいは残せた」と語り、「日本で一生懸命働いて、苦労して新宿でビルを建てた夫婦の心境を思うと自分の非力を感じずにはいられなかった」と述べた。だからこそ、センターの存在(無料相談)をもっと同胞たちの間に宣伝していこうと参加者に呼びかけた。 また高弁護士は、同胞高齢者への制度的差別として年金問題があるが、こうした問題も今回の国籍法改正案が通れば、なおざりにされてしまうと指摘した。 セミナー終了後、参加した同胞から意見や感想が述べられた。 東京青商会の具本憲会長は、「1世から学んだものを次世代に伝えながら、豊かな同胞社会をどう築いていくかが課題だ。そのためには法的な解釈だけでなく、同胞の精神面を大事にしていくべきだ。センターや青商会が率先して議論の場をつくっていきたい」と語った。 金黄英同胞(71)は、「まだ過去の清算は終わっていない。生活や権利も同胞自らが勝ち取ってきたものだ。若い世代の実情に合わせながらも、哲学を持ってやっていくことが大切だ」と語っていた。(金美嶺記者) |