春・夏・秋・冬

 「できないことは男(女)を女(男)に変えることくらい」。かつてのKCIA(現在の国家情報院)を形容した言葉である。61年、米国の支援を受けて軍事クーデターを起こした朴正煕は、その独裁政権を維持するためにKCIAを設置し、反共法(国家保安法)を乱用して反対者たちを片っ端から逮捕・投獄、処刑した。当時、政権に反対しようとすれば、命を失う覚悟を求められた

▼金大中氏は71年、果敢に大統領選挙に挑み、買収、脅しなど不正の限りを尽くした朴正煕をあわや、というところにまで追い込んだ。そのために事故を装った車によって命を落としかけた。七五年には都心のホテルから白昼堂々とら致され、海中に投げ込まれそうになった。彼のみならずこの時代、受難に会わなかった知識人、文学者、ジャーナリストたちを探すのが難しいほどだ

▼4月に来日した詩人、高銀もその1人である。作品の発禁、自宅軟禁…。それでも反独裁、民主化、統一の信念は曲げなかった。昨年6月に金大中大統領の特別随行員として平壌を訪れ、金正日総書記の前で現地で創った詩をひろうした

▼本紙とのインタビューで、民族文学の同質性回復は必ず実現し得ること、しなければならないと熱っぽく力説したが、「老雄健在なり」を改めて確認した

▼そういえば今春、ソウルに帰ったある記者の言葉を思い出した。「6.15共同宣言は必ず実現しなければならない。もしも壊そうとする者が出てくれば、私は1人になっても命を賭してたたかう」。精神は今も生き続けている。(彦)

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