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先日、南朝鮮から2人の詩人、作家が訪日した。藤原書店主催のシンポジウムにパネラーとして参加した高銀さん、済州島4.3事件53周年記念「4.3の生と死」について講演した玄基榮さんだ
▼歳が30近く離れている筆者に対して、高銀さんは終始、敬語調の言葉づかいで「統一を志向する民族文学とは何か」について熱く語ってくれた。前号(2日付)にそのインタビュー記事が掲載されているが、執筆最中、「これもいれよう、あれもいれよう」と思いながらも、字数の制限上、大分文章を削らざるをえなかった ▼が、高銀さんの民族統一に対する熱い思いが、今でも胸中にほうふつと沸き上がってくる。「南北の人々がたびたび会うことによって、必ず民族の同質性は見いだせるし、民族文化を向上させる共有財産も生まれるだろう」。マンナム(出会い)。取材中、その言葉を何度も繰り返しながら、生活のことや友人のことにまで話が及んだ。玄基榮さんについて「人間の心理を描写するのが非常にうまい」と語った ▼1948年の済州島4.3事件。大虐殺の中で1人生き残った順伊(スニ)おばさんの人生を描き、事件が現在を生きる人々に及ぼす影響を作品化した玄基榮さん。「執筆中、涙が止まらなかった」。当時の軍事独裁政権から拷問を受けながらも継続して4.3を題材にした小説を書き続けた ▼時代を揺さぶるほどの作品を書き続けた2人の話を聞いて、1人ひとりが分断意識の克服のために知恵と勇気を出し合うことがなにより大切なことであることを強く感じた。(舜) |