春・夏・秋・冬

 南の作家、玄基榮さんの「順伊(スニ)おばさん」の読者プレゼントに、同胞から多数のハガキが寄せられた。自分の故郷で何が起こったのかを知ろうとする同胞たちの知的欲望の強さを改めて思い知らされた。

▼いくつか拾ってみる。「済州島は両親の故郷であり、親戚の方が『サ・サム(4.3)』事件で虐殺されたので、ぜひ読んでみたい」(事務員、女性47歳)、「私の父は作品の舞台である北村里出身で祖父と叔母がサ・サム事件で虐殺された」(主婦、49歳)。彼女たちにとって「サ・サム」とはどういう存在なのか。じっくり話を聞き、まとめてみたいと思った

▼若い世代の反応も多かった。「祖父がサ・サムで日本に渡って来た。今、『4.3は語る』(全5巻)を少しずつ読んでいる最中」(朝銀職員、男性27歳)、「サ・サムで日本に渡って来た祖父は3年前に、祖母は2年前に亡くなった。在日のルーツをもっと知りたい。ぜひ当選を!」(会社員、女性25歳)

▼朝鮮学校の女生徒も素朴な気持ちで「自分と同じ『伊』という名前の一字にひかれて読んでみたいと思った。歴史は現在の鏡。学校で読書感想文を書くので当たりますように」(高1、15歳)

▼「サ・サム」とそれにともなう渡日の体験も、在日史の重要な位置を占めるものとして記憶される必要があり、この点はむしろ私たちの課題として引き受けていかなければならないと、寄せられたハガキはそう筆者に問い掛けているようだった。これからも、過去、現在の同胞生活の断面を追い続けていきたい。(舜)

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