初の全国組織、在日トンポ福祉ネットワーク

手をうないで問題を解決


 在日トンポ福祉ネットワークが19日、設立された。心身障害児を抱える家族たちのネットワーク、ムジゲ会の申桃順会長ら18人が呼びかけたもので、今後、各地にある同胞高齢者・障害者とその家族の連絡会、支援団体を中心に情報交換、親ぼくをはかっていく。同胞による全国的な福祉ネットワークの設立は初めて。総聯は18全大会で福祉問題に取り組む姿勢を明確にしたが、今後も同ネットワークの事務局を担当し、活動をバックアップしていく。

高齢者、障害者の理解・支援の輪を

 具体的な活動は、@高齢者、障害者の親ぼくと交流A高齢者、障害者の自立と社会参加のために必要な教育、医療、福祉などに関する情報の収集および提供B会報の発行とホームページの開設C高齢者、障害者とその家族のための支援活動と専門家の養成D日本の福祉団体との交流などだ。

 この日、東京・上野の朝鮮商工会館で、ネットワークの設立を兼ねたシンポジウム「新たに立ち上がる在日トンポ福祉ネットワーク」が開かれ、臨時代表に愼英弘・花園大学助教授、副代表に申桃順・ムジゲ会会長が選出された。会則、役員は8月の第1回総会で決まる。

 ゙令鉉・総聯中央同胞生活局局長は、「高齢者、障害者を抱える家族たちが長年抱えてきた問題を考えると、総聯がやっと一歩を踏み出したといえる。彼らが幸せに生きられるよう、継続して努力を注いでいく」と決意を述べた。

 シンポジウムには愼助教授、申会長、金永子・四国学院大学教員をはじめ、兵庫ムジゲ会の李久美会長、広島ムジゲ会の李相億副会長らがパネラーとして参加した。大阪、京都、愛知、千葉で障害者、高齢者問題に関わっている同胞も会場から発言し、同ネットワークが果たすべき役割について意見交換を行った。

 障害者問題に関しては、95年10月に家族同士の親ぼくをはかるムジゲ会が結成され、活動を進めているが、こうした動きは全国に広がっている。昨年10月に愛知、12月に広島、今年の5月には兵庫でムジゲ会が結成され、地域のネットワークが出来つつある。

 当事者が動きだしたことで、支援の輪も広がっている。

 昨年8月、ムジゲ会の活動の一環として開かれた 「ムジゲin大阪」には、府下の女性同盟、青商会、朝鮮学校教員ら160人がボランティアとして参加し、イベントをバックアップした。このイベントで府下の障害者の家族が初めて顔を合わせ、月1回の集まりが始まり、6月2日には大阪ムジゲ会が結成される運びとなった。この間の経緯を会場から報告した大阪在住の徐貞子さんは、「組織の力添えがなければ不可能だった」と振り返った。

 金永子教員、愼英弘助教授は、専門家の立場から今後の課題と可能性について提言した。

 金教員は、福祉問題を担う専門家やボランティアの育成が課題だと指摘。「総聯の全国的なネットワークを生かし、ボランティアの人材バンクのようなものを作ればどうか」と提案した。また、「障害者やその家族が孤独感をつのらせているのは、同胞社会に理解がないからだ」と述べ、全国に朝鮮学校を持つ総聯が朝高に福祉学科を設置したり、ボランティアの経験をさせるなどして民族教育の場から同胞の意識を啓発する必要があると指摘した。

 自身も全盲の障害を持つ愼助教授は、全国組織ができたことで、同胞高齢者の無年金問題や障害児の民族教育権の保障など、全国レベルで解決が望まれる課題にも取り組めると語った。総聯に対しては、「物心両面における援助と福祉分野に優秀な人材を派遣して欲しい」と要望した。(問い合わせ=臨時事務局TEL  090・9378・4685、メールアドレス=Potti@hotmail.com)

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