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婦人科の病気(下) 女性のガン

子宮ガン、ゼロ期はレーザー治療で
乳ガン自己検診が有用


  最近テレビで何人かの女優やタレントがガンで入院したり、亡くなったりという報道に接し、とても心配です。女性特有のガンが増えてきているのでしょうか。

  女性特有のガンとしては、子宮ガン、卵巣ガン、乳ガンがその代表的なものです。これらの内、卵巣ガン、乳ガンは明らかに増えてきています。当院で出産された方で、卵巣ガンで亡くなられた方が私の知る限りでもすでに3人いらっしゃいます。乳ガンは日本では外科で手術することがほとんどなので、当院での確実な数字は把握していません。

 一方、子宮ガンは卵巣ガンよりずっと多く発見されているにもかかわらず、亡くなられた方はありません。とくにゼロ期(CIS)と呼ばれる時期に診断がついた方は、レーザー治療が可能であり、その後に出産された方も見えます。このことから分かるように、初期の卵巣ガンの発見は困難だったのですが、最近では経膣超音波を用いた検査が行われるようになり、従来の内診だけの時より20倍もの卵巣しゅようが発見されています。近い将来、卵巣ガンの治療成績も一段と良くなるものと期待されています。

  子宮ガンには頚(けい)ガンと体ガンがあると聞いています。30歳を過ぎると子宮ガン検診を勧められますが、両方の検査が必要でしょうか。

  表1に両者の違いを示しました。頚ガンは40〜50歳代に好発しますが、最近では20〜30歳代の女性にも増加する傾向があると言われています。ハイリスクに含まれる方はとくに要注意です。ただし、組織学的には約90%が扁平上皮ガンと言われるもので、これは異形成という非常に初期の段階から浸潤ガンと言われる進行した段階に達するまで、少なくとも2年以上を要すると言われていますので、定期的な検診を受けてさえいれば完全に治る段階で発見可能です。

 一方、体ガンの発症にはエストロゲンという女性ホルモンが大きく関与しているため、妊娠後五年以内にこれが発生することはまずありません。したがって、不正出血などのない経産婦さんで30〜40歳代の方なら、体ガンの検診の必要はないでしょう。

 この両者の割合は、以前は体ガンが10%程度だったのが、最近ではゼロ期と呼ばれるCISを含めると29%、CISを除いた集計では40%にまで増加しています。この原因としては、動物性脂肪の過剰摂取、肥満、糖尿病、少妊少産、更年期障害に対するエストロゲンの単独授与などが考えられています。

表1

  子宮頚ガン 子宮体ガン
好発年齢 50歳代(30〜60歳代と幅広い) 50歳代後半(次いで60歳代)
ハイリスク因子 低年齢での性交開始
複数のセックツパートナー
ヒトパピローマウィルス感染
未婚、不妊、閉経後、月経不順
少ない妊娠、出産回数
エストロゲン服用歴
組織型 約90%が扁平上皮ガン 約88%が腺ガン
主症状 不正性器出血、水様帯下 不正性器出血
診断法 細胞診、コルポスコピー
細識診、円錐切除術
内膜細胞診
内膜細識診

  欧米では8人に1人が乳ガンになる、とある雑誌で知って本当に驚きました。いろいろな病気が欧米に似てくると言われる日本に住んでいる私たちにも同じようなことが起こってくるのでしょうか。

   答えはイエスでもあり、ノーでもあります。すでに、年々乳ガンが増加しつつあります。ただし、いくら生活が欧米化するといっても、食生活やライフスタイルが今以上に不健康にならなければ、すなわち動物性脂肪を摂り過ぎず、運動を規則的に行い肥満に気をつけるという生活を維持していれば、欧米におけるほどの発生頻度にはならないと考えられています。

 乳房の検診には、日本では従来、触診法がとられてきました。しかし、最近欧米の検診ではマンモグラフィーによって非触知乳ガンが高頻度に発見され、これが生存率の向上に寄与している事から、日本でもこの導入が検討されてきています。

 この検査がルーティーンに行われるまでは自己検診がまだまだ有用です。自分の手で乳房を触わってみて、何か固まりが触れないか、乳頭をつまんでみて異常な分泌物がないか、乳頭、乳輪部に湿疹はないか、乳房の皮膚が赤くなっていないかなどをチェックしてみてください。少しでも異常を見つけたら外科を受診してください。(医療法人友愛会ミナミ産婦人科院長) 

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