人・サラム・HUMAN

民族一つに結ぶ芸術を

画家・呉炳学さん


 川崎市に住む在日朝鮮人画家・呉炳学さん(77)が、16日、朝鮮新報社を訪れ、自らの画集を本社資料室に寄贈した。

 画集は変形4判、260ページ。収録された約200点の作品は、呉さんが半生を通じて描いたもの。その中には、呉さんが最も好んで描く朝鮮半島の伝統的な仮面の絵や踊り、李朝、高麗青磁などの焼き物の絵も収められている。

 「朝鮮の焼き物は世界最高峰の芸術品。そこには朝鮮民族の美意識が鮮やかに込められている。同じ白でも多彩なニュアンスがあって、静物というより、生命感にあふれて魅力的。それを生きたオブジェとして描いてきました」と呉さん。

 呉さんは日本の植民地下の1924年、平壌の北の町、平城で生まれた。幼い頃から絵が好きで、いつか画家になりたいと決めていた。平壌商業学校に入学して、絵を描くようになった。「19歳まで暮らした平壌の街は、私の美意識のルーツ。仲間と散策した七星門や牡丹峰の美しい景観、楽しかった大同江での水泳、平壌1周マラソンのこと…。あの懐かしい日々があったからこそ、ここまでやって来れたかも知れません」。

 呉さんは42年、絵の勉強のため東京へ。解放直後、東京美術学校(現・東京芸大)に入学したが、「期待したほどではなかった」と2年程で中退。独学でセザンヌ、ゴッホ、ピカソなどの画集から学びながらも、独特な画風を確立。

 「在日画家の仲間と共に、民族の伝統美に基づいた美術ルネサンスを起こしたい。引き裂かれ民族を1つにつなぐ芸術の力を見せたい」と夢を膨らます。 

差別の根っこは同じ

妹尾信考さん

 福祉教育アドバイザーとして、言葉と四肢に障害を持つ自身の体験を、全国の学校や企業などで語っている妹尾(せお)信孝さん(50)。数々の差別を乗り越えてきた体験の中から、真の教育とは、福祉とは何かを、自分の言葉で伝えることをライフワークとする。

 各地の朝鮮学校でも、積極的に講演している。「障害者問題、同和問題、民族問題、ハンセン病やエイズの問題も、すべての差別の根っこは同じ」との思いからだ。様々な問題の解決のためには「人間とは何か」を見つめ直すべきだと説く。

 「朝鮮学校で講演する度、いつも思う。一生懸命話を聞こうとする真剣な眼差し、自分の言葉で、感じたままを伝えようとする感想文の数々…日本の学校とは確かに違うと」

 今年1月に立ち上げたNPO法人日本福祉教育研究所では、人権について学びあう「人塾」を主宰する。

 「障害や民族の壁を越え、共に生かし生かされ、支えあう暮らしができる社会を目指しましょう」

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