現場から−具恵(北海道初中高教員・36)

相手の立場で考えること

課外活動で福祉に取り組む


5月12日に行われた車椅子体験学習


 本校では、3年前から課外活動の一環として社会福祉問題に取り組み、札幌市内の心身障害児・知的障害児施設、小学校の特別学級との交流活動を行ってきました。5月にはその第6回目として、高級部全生徒を対象に車椅子体験学習を実施しました。

 こうした活動を始めたきっかけは4年前、初級部の水泳教室でプールに行った時のことでした。たまたま同じ場所で障害を持った人たちが泳いでいました。初級部の子どもたちはとてもびっくりした様子で、ほとんどの子が心身障害者を見たことも接したこともないようでした。世の中には体や心に障害を持つ人がいるという事実自体もよく分かっていないのでした。

 この、偏見以前の無知の状態をどうにかしなければ、この子たちは障害を持った人たちに対してずっと誤解したままになると危機感を抱きました。そこで、心身障害者と直接触れ合いその立場を理解し、福祉に対する知識を深めてもらいたいと、こうした課外活動を始めたのです。

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 今回の車椅子体験学習の目的は、普段見かけることはあっても実際に触れることの少ない車椅子を実際に使ってみることで、当事者にとって今の環境がいかに不便であるか、また介助する側の立場に立ったらどのようなことに気をつけたらいいのかなどを知り、よりいっそう福祉に関心を持ってもらうことでした。

 車椅子は市と区の福祉協議会から借り、講師は、前もって福祉協議会の講習に参加した私たち教員が務めました。一時間の講義に続き車椅子に関するビデオを見ました。次に各部分の名称や取り扱い方を確認し、体育館で介助する側、される側の両方の立場を体験しながら操作方法を学んだ後、いくつかのグループに分かれ、実際に学校周辺の道路に出かけました。

 普段歩き慣れている道も、ほんの少しの坂や段差、美観重視でタイルの敷き詰められた舗道など、車椅子ではとても不便で危険です。電話ボックスにも入れないし、自動販売機の一番上のボタンにも手が届きません。郵便局にも、たった2段の段差のために入れませんでした。

 生徒たちの感想文にも、「少しの坂や段差がすごく気になった」「何も考えず歩道に車を乗り上げているのには参った」「私たちの住んでいる街は、障害を持った人には決して優しい街ではないことを悟った」など、車椅子に乗る立場になって初めて分かったことがつづられていました。さらに、今回の体験はとても貴重なもので、その場限りで終わるのではなくいつでも心に留めて置くようにしたいと、多くの生徒が思ったようです。

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 何に対しても実際に自分の目で見て触れ、相手の立場に立って考えることが必要です。そしてきちんと知ることが、誤解を解くことにつながります。それは、私たちが日本の人に朝鮮学校のこと、在日同胞のことを理解してもらおうとする時、いつも思うことです。

 コミュニケーションの場をたくさん設けることで相手の立場で物事を考える機会が増え、自然に相手の存在を受け入れられるようになれば、それがノーマライゼーション(障害者などが地域で普通の生活を営むことを当然とする福祉の基本的考え)につながるはずです。今後も生徒たちのために、教科書や教室の中では学ぶことのできない大切な場を作り、どんどん参加させてあげたいと思っています。

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