医療−最前線

介護と「家」制度


 介護保険法がスタートして1年。これまで、家族が担っていた介護を社会の責任で行う意味では、一定の役割を担っているのかも知れない。

 介護法にも賛否両論があるが、実際、老親の介護を担っている、女性や「嫁」の立場から悲喜こもごもの声が聞こえてくる。

 ある40代の同胞女性のケース。長男の「嫁」ということで、同居している80代の老親(義父母)の世話を担っている。糖尿気味の義父の3度の食事の世話から足の不自由な義母の病院通いまで休む間もない。

 夫の両親とも長い間心を通わせる努力をしてきたこともあって、介護や世話そのものに不服があるわけではない。加齢は誰でも避けて通れないもの。「できるだけ、快適な老後を過ごしてもらいたい」という思いも人後に落ちない。

 ところが、時々、義父についてきた病院で、旧知の看護婦にこぼすことがある。

 「義姉や義妹が年に1、2度顔を出しては、親の世話について、口を出していくのよ。肌が汚れているのだの、やせてきたのだの…。自分たちは娘として、何にもしたことがないのに…。それが悔しい」

 「義妹たちが顔を出す度に、不愉快な思いがしてしまう。義母から娘たちにごちそうを作れ、とか、お小遣いを準備しなさいと言われる。それじゃあ、持ち回りで世話をしましょう、と心の中で叫んでしまうのよ」

 家の制度のもとで、親の介護を担わされてきた女性たちの悲鳴が聞こえてくるようだ。法律が出来たからそれでいいとはいかないのだ。
(李秀一・医療従事者)

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