10年ぶり、初1からの入寮生/洪允澤、成華兄妹

上級生、教員らに見守られ、愛情いっぱいの寮生活

北海道朝鮮初中高級学校

寮の勉強部屋で。将来の夢を聞くと「看護婦さん」(成華ちゃん)、「パチンコ屋」(允澤君) 「ソンセンニムやオンニたちがいるから寂しくないよ!」。お気に入りのキティちゃんに囲まれて眠る成華ちゃん

 地域同胞らの民族教育に対する熱意の結晶として建てられた北海道朝鮮初中高級学校(札幌市、崔寅泰校長)。61年4月の創立5ヵ月後には寄宿舎が完成、広い道内の各地域から子どもたちを受け入れてきた。今も南は苫小牧、函館、北は旭川、北見、稚内、東は帯広、釧路、根室など各方面から子どもたちが寄宿舎に入り勉学に励んでいるが、昨年、10年ぶりに初級部1年生が入寮した。やんちゃ坊主の洪允澤(ホン・ユンテク、函館方面・上磯郡木古内町出身、初2)君だ。今年は妹の成華(ソンファ)ちゃんも入学。函館出身で、初級部1年生から同校で寮生活を経験した張華純先生(22)と孫優美さん(高2)をはじめ、学校中が2人の成長を温かく見守っている。(李明花記者)

「自分でできる」

 「キサンシガニムニダ(起床の時間です)」

 午前7時。先生の寮内放送で目を覚ました寮生たちは着替えをし顔を洗った後、階下で点呼を行い、食堂で朝食をとる。

 4月から、生まれて初めて両親の元を離れて寮生活を始めた成華ちゃんは、何をするにも決して兄の手を借りない。自分の体がすっぽり入ってしまうほど大きな炊飯釜の前で、背伸びしながらご飯をよそう。記者が手を貸そうとすると、「自分でできるから大丈夫!」と断わられた。洪兄妹の席は隣同士だ。「成華の嫌いな野菜が入ってる」と顔をしかめ、我慢しながらおかずを口に運ぶ妹に、「こうやって息を止めて一気に食べるんだ」と「好き嫌い攻略法」を教える允澤君。やはり兄妹、とても仲が良い。

 彼女の入学に合わせて、今年から寮で生活を始めた初級部1年の担任、゙順和先生(23)は、「成華は学校では友達に決して涙を見せないが、私の前では我慢の糸が切れ、急に涙をこぼすことがある。そんな時は、思う存分泣かせてあげるとまたすっきりして元気になる」という。

 「1年生の頃は允澤の方が泣き虫だった」と微笑むのは、允澤君の入学当初から寮で生活をともにしてきた朴宏昌先生(22)だ。「でも成華と一緒に生活するようになってからは、オッパ(兄)としての自覚が芽生えたのか、夜眠れないからと、私の部屋を訪ねることも少なくなった」という。

 午後8時を過ぎると允澤君ら兄妹の部屋には、函館出身で高級部2年の孫優美さんや張華純先生(22)をはじめ、寮内の誰かが必ず部屋を訪れる。2人が眠りにつくまで、布団の中で本を読んであげるためだ。

 優美さんは「私が1年生の時は、家が恋しくて毎日泣いていた。そんな時、上級生や先生たちがどんな風になぐさめてくれたかを思い出しながら接している」と語る。「2人は私たちにとって弟や妹のような存在。生まれた時からよく知っている。たくさんの上級生のなかで甘やかされ過ぎないように気を付けている」(張先生)。

新しい「オモニ」も

 兄妹の両親、洪允哲、権美重夫妻(ともに34)は札幌市から300キロ離れ、学校まで車で片道5時間以上かかる木古内町で暮らしている。夫妻はともに北海道朝高の第1期卒業生で、洪さんは初級部1年から、権さんは初級部6年から寮生活を送った。

 「本音を言うと、幼いだけに『旅』はさせたくない。心配で眠れない夜もある。周囲から、『そんなに早くから入れなくてもよいのでは』と言われたこともあったが、2人には幼い頃から民族心をしっかり身につけてほしかった。私たちも寮に入った当時は寂しかったけれど、今の自分があるのは民族教育のおかげ。心を鬼にしてウリハッキョに送ってくれた両親には本当に感謝している。だから私たちも心を鬼にして允澤たちを寮に入れた」

 夫妻は、2人が生まれた時から寮生活のことを考え、不便しないようにと、着替えや入浴などを1人でこなせるようできるだけ手を貸さずに育ててきた。

 入学の際、両親は学校側に1つだけ願いごとをした。「放課後から夕方までの空いた時間を、母親のように面倒をみてくれる人に見守ってもらいたい」。

 学校側が力を尽くした結果、允澤君の同級生、金智娟君のオモニ、富子さんが放課後、2人の面倒を見ることになった。2人は学校が終わると富子さんとともに宿題をしたり、おやつを食べたりしながら過ごしている。兄妹は週1回、学校近くのスイミングスクールに通っているが、その送迎も富子さんが担当している。

 洪一家の末っ子、誠澤君(1)が入学する頃は2人も中学生。その時は「交替で本を読んであげたい」(允澤君、成華ちゃん)。

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