各地で実を結ぶ、教育助成金獲得運動

日本市民に理解広がり、「支える会」結成へ


埼玉・中部支部の教育助成金拡充推進委は
1万人を超える署名を集め6市に提出した


 制度的差別によって、朝鮮学校に対する日本政府の公的助成は一切行われていないなか、総聯と在日同胞はその解消を求める一方で、都道府県や市区町村に対して朝鮮学校に私立学校並みの教育助成を求める運動を続けている。そうした結果、姫路市は今年度から保護者補助金制度を新設、埼玉県下の市、町も近年、保護者補助金制度を新設、増額した。総聯兵庫・姫路、姫路西支部の活動と総聯埼玉県本部の助成金獲得運動を紹介する。(張慧純記者、生活・権利欄に関連記事)

署名、懇談、公開授業/市長、議員らに要請繰り返す

埼玉

 埼玉県の朝鮮学校はさいたま市にある埼玉朝鮮初中級学校、1校だけで、県内各地の子供たちが通っている。

 総聯埼玉県本部では98年の総聯18全大会以降、今年の埼玉初中創立40周年に向け、@保護者補助金を1人あたり10万円に増額A保護者補助金を支給していない市町での制度新設―の目標を掲げ、運動を進めてきた。

 運動に当たって、@活動家と同胞の間で権利意識を高め、同胞が主体となって運動を進めるA市・町議会議員、行政、一般市民の間で民族教育への理解を広げる――という2つの方法を取った。そしてその実現のために、本部、支部に助成金拡充運動を進める推進委員会を設置し、県、市町村に対する地道な要請活動を行った。

 例えば、昨年3月に発足した総聯中部支部(大宮市などを管かつ)の推進委は、日本弁護士連合会が日本政府に朝鮮学校の差別是正を勧告した(98年2月)内容や、各地の運動経験を学ぶ勉強会を企画。浦和、大宮、桶川、岩槻の4ヵ所に地域協議会を設置し、各ブロック別に要請を行った。

 今年5月からは延べ120人の同胞が参加して、助成金拡充を求める1万人署名運動を行い、浦和、大宮、与野市(今年5月からさいたま市に合併)などに提出した。

 とくに、朝鮮学校生徒数が県内最多で学校の所在地でもある大宮市が保護者補助金を支給していないことから、同市に対しては集中的な要請を行った。昨年7月には50余人の同胞が大宮市長と教育懇談会を開き、民族教育への理解を求めた。

 昨年度から保護者補助金が前年度の1.6倍の1人あたり年額9万6000円に増えた熊谷市を管かつする総聯北部支部は、99年9月に支部、分会、商工会、オモニ会らの役員らによる推進委員会を結成し、運動を進めてきた。

 とくに支部管下で生徒数が最多の熊谷市に対する要請を集中的に行った。市教育委員会、市長を窓口に定め、半年の間に8回も担当者と会って助成金の増額を求めた。

 県の推進委でも、一般市民の間で民族教育に対する理解を深めようと、1999年と2000年に県議、市議、教職員、行政、市民団体をはじめとする幅広い層を対象に埼玉初中の対外公開授業を開催した。99年には240人、昨年は170人が訪れた。そのほかにも日朝友好フェスティバルや、学校のチャリティーコンサートなどの場を日本市民に開放。現在、日本市民らは「朝鮮学校を支える会」結成のため、準備を進めている。

 このような運動の結果、県下では岩槻市、新座市が今年度から埼玉初中保護者に対する保護者補助金制度を新設、川口市、吹上町が保護者補助金を増額した。近年、県下の市町では保護者補助金制度が着実に新設され、すでに支給されている市でも増額が続いている。

署名2万、1500人規模バザー/5年越しの要請、市議ら対象に勉強会も

兵庫・姫路

 姫路市には西播朝鮮初中級学校があり、姫路市、加古川市をはじめとする播州地域の子供たちが通っている。同校を管かつする総聯姫路支部、姫路西支部では、15年前に設置した民族教育対策委員会を5年前の96年に再編成し、教育会理事、オモニ会、アボジ会役員を中心に地道な活動を進めてきた。

 対策委は3つの活動方向を柱にすえ、運動を進めた。その内容は、@行政当局に対する要請を絶え間なく進めるA近隣の日本学校、市民の中で民族教育の理解を広げるB市議会議員らが助成金増額に積極的に取り組むよう働きかける――である。

 まず97年、一般市民の間で朝鮮学校が置かれた差別的状況について一般市民に広く訴えようと朝鮮学校の処遇改善を求める署名活動を展開、2万余人分を集め、姫路市に提出した。また同年は公開授業、99年にはバザーを西播初中で開催し、それぞれ日本市民ら300人、1500人を集めた。

 市議、行政の担当者らにも学校を見てもらうため、98年には市議会の文教委員、教育委員らを対象にした公開授業を開催した。昨年11月には全市議を対象に民族教育に関する講演会を開いたところ、ここに参加した30余人が「朝鮮学校の現場を見よう」と声を上げ、26人の市議が西播初中を訪問した。今年の2月には姫路市長が同校を初めて訪れている。

 市議、行政、日本市民の理解が深まる中、対策委は昨年11月、保護者補助金支給を求める請願書を市議会に提出。請願書は採択され、3月の市議会で保護者補助金制度の新設が全会一致で決まった。

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