新世紀へ−民族教育を歩く
ひとつ屋根の下
「寄宿学校」といえば、日本では案外なじみが薄いだろう。あるいは欧米のボーディングスクール(全寮制学校)のような「エリート校」を連想するかもしれない。そういえば、世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの舞台の魔法学校もこれだ。
朝鮮学校は、全体の2割弱が寄宿舎を併設している。広い学区を有する地方の学校では通学が困難な場合が少なくなく、中には1年生から親元を離れ寮生活をする子もいる。「断腸の思い」。わが子を奪われた母猿の腹を開くと腸がズタズタに引き裂かれていたという中国の故事に、その心情を例えたオモニがいたが、幼子に寮生活をさせてまで民族教育を受けさせたいという親は、最近では少数派なのが現実だ。おりからの少子化も拍車をかけている。しかし、たとえ1人でも寮生活をする子どもがいる限り、「家庭」に劣らない環境を保障する。というのがすべての学校に共通する認識で、食生活を基本とした健康管理、学習指導や子ども同士の関係に至るまで細やかなケアがなされている。学生と教職員が、ひとつ屋根の下で家族のようなきずなを結んできたいくつもの歴史がある。 21世紀の民族教育の発展に、これを有効活用しようという向きもある。「ピンナラ(輝け)寮」に中四国全域から学生を受け入れている岡山初中の李康烈理事長は言う。「地方の朝鮮学校はみな少子化という共通の問題を抱えている。10年後に生き残るためにも、全国の子どもたちが『行ってみたい』と思うような特色ある学校づくりを目指したい」。(姜和石記者) |