「植民地支配」「被爆」「切り捨て」の3重苦
放置される在朝被爆者
過去清算の一環、援護は日本の最低義務
在外被爆者への援護法適用を求めた大阪地裁判決を支持し、日本政府に控訴を断念するよう訴える日本市民ら(6月11日、東京・厚生労働省前) |
日本政府のやり方を不当とし、在外被爆者への被爆者援護法適用を求める判決が1日、大阪地裁で下され注目を集めたが、日本政府などは15日までに控訴。在外被爆者への援護法適用をあくまでも拒む姿勢を示した。現在、朝鮮半島には北に1000余人、南に2300余人の被爆者が暮らす。彼らはみな、日本の植民地支配によって渡日を余儀なくされたすえに広島と長崎で被爆し、その後、帰った人たちだ。とくに北の被爆者は、「国交がない」という理由で半世紀以上、完全に放置されたままだ。法解釈の問題以前に、そもそも日本政府には過去清算の一環として彼らを救済する義務がある。
通達盾に適用外す この「被爆者援護法裁判」は、南朝鮮に暮らす被爆者、郭貴勲さんが、日本政府などを相手に被爆者としての地位確認などを求めていたものだ。大阪地裁は、「出国によって被爆者の地位を失わせることはできない」という初の判断を示し、国の援護法適用の見直しを迫った。 被爆者援護法は1994年、それまでの原爆医療法(57年)および原爆特別措置法(68年)に代わって制定された。国籍条項はない。日本国内に在住する被爆者なら国籍を問わず、健康管理手当(月額3万4130円)などが支給され、無料で健康診断などが受けられる。 同法そのものに対象者の居住地規定はないが、日本政府は74年の「日本国外に居住地を移した被爆者には法の適用がない」という厚生省(当時)公衆衛生局長通達(402号通達)を盾に、日本人も含めて海外に住む被爆者を一貫して同法の適用外としてきた。 加害者の認識を 北南を問わず朝鮮の被爆者たちは、日本の植民地支配、被爆、戦後の援護切り捨てという「3重苦」を強いられてきた。 南側に対しては81年から5年間、被爆者394人が広島・長崎の原爆病院で治療を受けるようにするなど、不十分、一時的とは言え、財政、医療的な措置が取られたことはある。 しかし、北に暮らす被爆者は「国交がない」という理由で、完全に放置されてきた。朝鮮では95年に発足した「反核平和のための朝鮮被爆者協会」が独自の調査および認定、医療活動を行ってきた。 99年8月6日、当時の小渕首相が在朝被爆者に対する医療器具、医薬品などを援助する意思があると表明して以来、今年3月には外務省、厚生労働省の代表らが調査のために訪朝するなど若干の動きはあるが、国交正常化交渉も中断されている現状下で、根本的な解決には遠い。 日本政府代表が訪朝した際、「反核平和のための朝鮮被爆者協会」の朴文淑副会長は、被爆者問題を一日も早く解決するため日本政府が公式に、しっかりとした謝罪と補償をするよう強調した。自らも被爆者である文副会長は、「日本政府による謝罪や補償がされないのに、私たちが頭を下げて日本に治療に行くことはない」と語る。 控訴後、日本政府は被爆者援護法の見直しに向けて動きだしたが、たとえ在外被爆者に日本国内の被爆者同様援護法が適用されたとしても、「3重苦」を背負ってきた在朝鮮被爆者らにとって、「内外平等」は最低限の補償にすぎない。原爆の問題では日本政府は被害者としての立場でのみ語りがちだが、加害者としての側面があることを忘れてはならない。過去清算の一環としての根本的な対策が一日も早く求められている。(韓東賢記者) |