ハンセン病同胞患者、大多数が身よりない1世

各総聯組織、交流し励ます


今年4月、熊本の菊池恵楓園で行われた
福岡朝鮮歌劇団の慰問公演


 日本政府の隔離政策により、療養所での非人間的な生活を強いられたハンセン病の元患者らに補償金を支給する法律が15日に成立した。しかし、日本の植民地支配による過酷な強制労働と貧困のすえに発病し、「2重の差別」に苦しんできた同胞患者の苦悩は今も続いている。踏みにじられてきた彼らの名誉を回復する取り組みはこれからだと言える。

同胞患者にも支給

 補償金支給法は、ハンセン病患者に対して不当な強制隔離政策を90年以上にわたって続けてきた日本政府の過失責任を認めた5月の熊本地裁判決を受け、制定されたものだ。

 前文には、過去の隔離政策と「らい予防法」廃止の遅れが患者に耐え難い苦痛と苦難を与えたとして、反省、謝罪する内容が盛り込まれている。また、元患者の名誉回復と死没者に対する追悼の意を表するため、「元患者の意見を尊重し、必要な措置を講ずる」としている。

 対象となるのは、ハンセン病療養所に入所したことのある患者・元患者だ。本人の請求(5年以内)に基づき、入所した時期や期間に応じて1400万〜800万円が支給される。

 「在日韓国・朝鮮人ハンセン病患者同盟」の金奉玉委員長(75、多磨全生園)は同法について、現時点では同胞患者への差別はないと評価する。

 厚生労働省は今後、名誉回復のための啓発事業、真相究明機関の設置など、法制定過程で「検討が必要」とされた具体策を全国ハンセン病患者協議会(全患協)などと協議していくが、同同盟は具体策を決定する過程で同胞患者に対する差別があれば、「断固たたかう」(金委員長)意思を、全患協に伝えている。

 現在、全国の国立療養所には232人の同胞患者がいるが、補償金が支給されても療養所を出る人は「皆無だ」(金委員長)という。それは、患者の大多数が1世で高齢であること、また若い頃に療養所に隔離されたことから、日本に身寄りがいなかったり、いたとしても根強い偏見から行き来がないからだ。人生の大半を過ごしてきた療養所で晩年を過ごす同胞が大多数だという。

触れ合い強く望む

 療養所が所在する各地の総聯本部や支部は、総聯の出版物を届けたり、年末に「愛の募金運動」で集めた義援金を届けるなど、同胞患者との交流を続けてきた。

 総聯熊本県本部は昨年4月、菊池郡にあるハンセン病療養所、菊池恵楓園で福岡朝鮮歌舞団の慰問公演を初めて企画した。患者らを元気づけるためだ。金末幸委員長は、チマ・チョゴリをまとった団員の歌や踊りを見て「故郷の歌を聞いて涙が出た」「毎年来てくれたらありがたい」と話していた同胞患者の姿が忘れられないという。

 多磨全生園のある東京・東村山市を管かつする総聯西東京・東部支部は、無年金高齢者に給付金支給を求める運動を同園の患者とともに行ってきた。

 東海朝鮮歌舞団は一昨年のすえ、御殿場市の駿河療養所で公演。鹿児島県本部は同県内の星塚敬愛園の同胞患者に、数10年来、毎年義援金を送ってきた。

 同胞患者はより以上の同胞社会との触れ合いを強く望んでいる。

 15年前から毎年、学生らとともに岡山や香川の療養所を訪れ、日本政府のハンセン病政策を研究してきた四国学院大学の金永子教授(社会福祉学)は、同胞社会全体で元患者への関心を広げるべきだと話す。

 「同胞社会におけるハンセン病の理解は、患者と同世代の1世の中では偏見が強く、若い世代はまったく知らないという両極端だ。民族教育などの場を通じて、彼らの生き様を記憶にとどめることが、異国の地で亡くなっていった患者の思いを汲むことにつながる」(金教授)

名誉回復を急げ

 日本政府は今回、隔離政策については謝罪し、補償することを決めたが、在日同胞患者の苦悩、その苦悩を生み出した朝鮮の植民地支配の責任には目を向けていない。それは、補償法が植民地下の朝鮮半島にあった国立療養所の入所者、日本から朝鮮半島に帰国した元患者を対象から外していることからも明らかだ。

 同胞患者は、民族的偏見とハンセン病に対する偏見という2重の差別の中でも民族の尊厳、人間の尊厳を守り続けてきた。日本政府は過去清算の一環として、植民地支配を視野に入れ、彼らの名誉回復に取り組むべきである。(張慧純記者)

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