春・夏・秋・冬

 ブッシュ大統領の西部劇映画好きは、よく知られた話だ。あらくれたカウボーイが好きなのか、さっそうと現れて正義のために銃を抜く保安官が好きなのか、寡聞にして知らないが、昨秋の大統領選挙の時に米国の友人から、「彼なら西部劇感覚で政治をやりかねない」という話を幾度も聞かされた覚えがある

▼それを知ってのことなのか、米日首脳会談にのぞんだ小泉首相は、ブッシュ大統領との昼食の席で「真昼の決闘」を話題に取り上げ、孤立無援でならず者たちを倒す保安官役を演じたゲーリー・クーパーが「米国の精神を表している」と語ったという。満面笑みを浮かべるブッシュ大統領(?)

▼西部劇の組み立ては敵と味方の二者、そして勧善懲悪と、非常に簡単でわかりやすい。悪者を片付けてさっそうと馬に乗りその場を後にする「シェーン」の最後のシーンなどは、米国人の心をとらえて放さないらしい

▼しかし、それはあくまでも娯楽映画の一場面、物語なのである。それを現実と混同したり置き換えられては大変なことになる。ところが米国は現実の国際社会の中に、西部劇そのままの構図を持ち込んで、「われは世界の保安官なり」と実際に銃を撃つなど、わがもの顔の振る舞いをしてきた。かつての朝鮮、ベトナム戦争、最近ではイラクの事態がそうである

▼今回も「数発のミサイルを有しているような勢力にわれわれを脅迫させてはならない」と、保安官気取りで朝鮮をひぼう中傷したというが、言語道断。その危うさが災いしてか米国民の支持率は、ここ5年間で最低だ。(彦)

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