私たちのチャンプ、洪昌守が与えてくれたもの

つどい後に行われた宴会でひっぱりだこの洪選手 朝鮮大学校のボクシング部たちにとってはまさにヒーロー

 祖国訪問期間(6月19日〜23日)に、朝鮮民主主義人民共和国労働英雄称号を授与された人民体育人でプロボクシングWBC世界スーパーフライ級チャンピオンの洪昌守選手(26、東京朝高ボクシング部OB)を祝う在日朝鮮青年学生たちのつどいが3日夕、東京・北区の東京朝鮮文化会館で行われた。世界王座に就いた今も朝青大阪・東成支部大成班班長を務め、朝青活動にも積極的に顔を出す。無名時代から一貫して「朝鮮人、洪昌守」であり続け、祖国統一を叫ぶ「われらのチャンプ」。そんな洪選手のファイティングスピリットは、同胞青年たちにストレートに伝わっているようだ。

祖国

 この日、洪選手は祖国訪問時のエピソードや感想を述べながら「僕の最も大きな願いは祖国統一。ボクシングを通じて統一実現に貢献したい」と力強くアピールした。

 洪選手は、「板門店に特設リングを設置して試合を行い、北南の人々が自由に往来して応援できるようにしたい」と常々語ってきた。

 国旗とともに白地に朝鮮半島を青く染めぬいた「統一旗」を掲げ、「われらの願い」を斉唱し、「朝鮮はひとつ」のシュプレヒコールをあげる。会場入場曲には朝鮮映画「月尾島」のテーマ「海岸砲兵隊の歌」を使用し、「KOREA  IS  ONE」の刺繍が入ったトランクスを身につける。洪選手がリングから発する「統一」「民族」「在日」へのメッセージだ。

 海陽薬業株式会社に勤める金東赫さん(23)は、「洪選手が出自を隠さず、むしろそれをアピールする姿に力が湧く。彼を見ていて、最後まで諦めなければなんでもできるんだという自信が持てるし、今後何があろうと朝鮮人として生きていく道からそれたくないと思う」と話す。

本名

 洪選手は、東京朝高を卒業後、一時は家業に入るが、朝高時代からやっていたボクシングへの未練を捨てきれず、プロを目指して単身大阪に向かう。生活費とトレーニングにかかる費用はバイトで工面し、実家からの援助は受けなかった。

 プロへの道は厳しい。まして「朝鮮人」と公言することは、いまだ差別意識の根強い日本社会だけに、その道をより険しくする恐れがあった。しかし洪選手は、本名を名乗ることにこだわり続け、つねに自分が何者かをアピールした。その姿に勇気を得た同胞青年は少なくない。

 朝鮮大学校文学部1年生の黄善姫さんは、「病院やショップなどで自分の名前を記入するとき、『相手から違和感を持たれないから』と、いつも通名を使用してきた。でも今は洪選手に影響されて、本名を使っている」と率直に語った。

 小学校から日本学校で学び、現在獨協大学2年生の李全美さんは、「高校まで通名で通っていた。でも、自分の国籍は朝鮮だし、本名を名乗らなければ自分自身を否定することになると思い、大学から本名で通い出した。洪選手が本名でたたかう姿は勇気と感動を与えてくれる」と述べた。

朝青

 現在、朝青東成支部大成班班長を務める洪選手だが、大阪での下積み時代、お金がなく途方にくれたこともあった。そんなある日、偶然知り合った同支部の朝青員らに世話になったことから、朝青活動に携わるようになり、朝青と密接に関わってきた。

 トレーニングで疲れた体を押して、地域の朝青員宅を訪ね歩いたりもした。

 朝青千葉・朝銀支部本店班の金圭錫班長(25)は、同じ朝青班長である洪選手と自分を比較しながら、洪選手を「ひとつの灯り」と表現する。「人を引っ張っていくためには心に熱いものがみなぎっていなければならないんだと、彼を見て実感する。僕も強い意志と熱い思いで頑張りたい」

 東京都商工会に勤める金恵玲さん(23)はこう話す。

 「洪選手は『現代版の朝青活動家』。活躍の幅が広い分、視野も広い。カリスマ性があり、誰もが認める条件を備えている。それに、世界チャンプだけど近寄りがたいオーラはなく親近感がある。同胞社会にこんな若者がもっとたくさん増えてくれたらうれしい」(李賢順記者)

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