5月に発足した、兵庫福祉教育研究会
より良い障害児教育に取り組む
学校・保護者・同胞社会、必要な3者の理解と協力
総聯兵庫県本部教育部は5月、「兵庫福祉教育研究会」を発足させた。県下の朝鮮学校における障害児・福祉教育の充実をはかるために、現場の現状を把握し、担当教員の悩みや学校が抱える様々な問題について意見交換を行い、専門知識も学んでいく。また、保護者や日本の行政との連携も深める。同胞社会で高まる福祉問題への関心に具体的に応えていこうというものだ。(張慧純記者、生活・権利欄に関連記事)
教育部が主催 研究会には、担任しているクラスに障害児がいたり、障害児教育や福祉問題に関心のある、朝鮮学校教員10数人が参加している。 学期に1、2回程度のペースで、@朝鮮学校でどのように障害児教育に取り組んでいくのかA児童・生徒たちに障害児や高齢者に対する理解をどのように広め、深めていくのか、この2つをテーマに勉強会を開いている。 朝鮮学校は人的、物的な制約のなかで障害児を受け入れている。障害者教育を専門に学んだ教員もいない。関わった教員の悩みは深刻で切迫しているが、今まで障害児教育について学んだり、県下で同じ境遇にいる教員同士が意見交換する「場」はなかった。 6月22日に行われた2回目の勉強会では、障害児を担任している教員の座談会が開かれた。 尼崎朝鮮初中級学校の李良淑教員は、「障害を持った児童を受け入れた以上、彼らの学ぶ権利は保障しなければならない。しかし、100%、それを保障できているのかどうか不安だ。一言で、暗中模索、試行錯誤。ほかの児童もいるので、余裕を持って見てあげられていない。補助教員がいれば…」と率直に語った。 西神戸初級では、軽度の知的障害を抱えた児童が学んでいる。昨年、その児童を担任した金香淑教員、そして今年の担任の呉良淑教員は、その児童を個別に指導する補助教員を置いた取り組みについて報告した。 金教員は、「兵庫でも5月に障害者を抱える保護者たちの『兵庫ムジゲ会』が発足したが、朝鮮学校への就学を希望する会員は多い。受け入れ基準や手続き、学校側が堅持すべき姿勢など、障害児を受け入れるための具体的なガイドラインを作り、保護者たちを安心させるべき」と語る。 「現場」を支援 学校、保護者、同胞社会の3者の理解と協力が整ってこそ、障害児教育がスムーズに進むという認識は参加者に共通したものだ。 尼崎初中の李教員は、担任した障害児の保護者が、クラス全員の保護者の前で自分の子供の障害の内容や留意点について説明したことを紹介しながら、「保護者の勇気ある行為が理解を深める大きなきっかけになった」と話す。 同席した総聯本部の福祉問題担当者は、教育現場に集中している負担を取り除き、朝鮮学校の障害児教育を充実させるためには、地域で講演会などを頻繁に開き同胞社会の偏見、無知を取り除くことも重要だ、と発言していた。 教員らの関心は、どうすれば現状下でも障害児教育を充実させることが出来るのか、という点に集中している。しかし、朝鮮学校は日本政府の制度的差別を受けていることから、同胞障害児が日本学校に通えば、保障される人的、物的保障が現在、まったくないという「限界」も抱えている。 研究会では障害児教育をめぐる日本の行政システム、日本学校における取り組みも学んでいるが、それは今後、行政に対して「同胞障害者の民族教育権」を求めていこうとの問題意識から出発したものだ。 内容の充実を 児童・生徒たちに障害者、高齢者に対する理解を深めさせる福祉教育を充実させる問題に関する意見交換も活発だ。 神戸朝高の生徒が老人ホームでボランティア活動をしたり、初中学校が1世との交流をするなど、県下の朝鮮学校でも少しずつ福祉教育に取り組んでいるが、体系化されたものはない。 研究会では朝鮮学校できちんとしたカリキュラムを組み、福祉教育に取り組むべきだとの意見も出され、試案も発表されている。 |