夏だ、山の季節だ!

在日本朝鮮人登山協会金英会長に聞く


 今年もまた夏山の季節がやってきた。澄んだ空気、眼前に広がる雄大な景色、美しい草や花。どれをとっても夏山は魅力たっぷりだが、晴天な青空とは裏腹に、山には危険が多く潜んでいる。登山する予定の山に対する基礎知識や準備などを怠ると、遭難、ケガなど大事故をひきおこすことになる。夏山の危険について在日本朝鮮人登山協会金英会長(75)に話を聞いた。

 登山は季節における大自然の変り目など、四季を通じて楽しむことができる。山頂に達した時の勝利感や征服感、大自然に接しそれを一望する感動はすばらしい。また、登山は筋肉や心肺機能を高め、心身ともにリラックスでき、ストレス解消や精神的安定、集中力、新陳代謝などの健康増進にも最適とされている。とくに、夏の登山は、新緑と高山植物、野生動物などに触れ、ほどよい汗をかくとともに暑さの中、排気ガスやストレスの多い都会から心身ともにリフレッシュしてくれる。

 だが、夏山を登る際に、遭難や大事故を引き起こさないためにも登山を予定している山に関する情報や、コース設定、飲食物などの準備は入念にしなければいけない。

 以下夏山の危険と対処について簡単にまとめた。

ルールを守り、雨具、飲食物など準備は入念に

 @山の天気は急変する。

 一般的に山を100メートル登ると気温は0.6度下がるという。平地の気温が30度なら3000メートル級の山頂の気温は12度となる。それに山風が1メートル吹くと体感温度は1度下がるとされる。まして1時間毎に気候が変わるとされる山頂で雨具、セーターなどの防寒服は欠かせない。下着は通気性と速乾性にすぐれたゴアテックスやオーロン素材のものを薦める。木綿製の下着は通気も乾きも悪く、風邪など体調不良をひきおこすことがある。また夏山登山では落雷に気をつけなければいけない。雲の流れを常に観察することと避難場所を確保すること。大きな木の下は最も危険で、岩場のへこみへ避難する。また、樹木がない平地の場合は地面に伏せるようにする。

 A靴は底の厚いゴム製の足首の長い防水加工の靴を選ぶ。

 長時間にわたり登山を続行する時、靴は重要な一部分をなす。ねんざや打撲などのケガから身を守るためにも、足首の長い靴を選ぶことを薦める。

 B高山病を患ったら下山する。

 2100メートル級以上の山に登ると、高山病に見舞われる。高山病は頭痛、呼吸困難、吐き気などをおこす。これといった特効薬はないので、患った場合その場で安定させるか、近くの山小屋まで戻る。山登りを中止し、下山することを薦める。

 C熱中症に注意する。

 夏山登山の特徴と言える熱中症は、主に標高が低い山を登るときにおこる。樹海などない場所で体感温度が30度に達する場合地表の温度は50度に達している。また、体温が42度に達すると脳死に至る可能性もあるので厳重に注意する。直射日光を浴びながらの登山中、体がふらふらしたり、吐き気などをもよおす時は、登山を中止し、木陰などで休みをとりながら冷たいタオルなどで首筋と脇下を冷やす。

 Dアルコールは慎む。

 ほかの季節の登山と違い、夏山登山は汗をかく量が多い。愛飲家ならずとも運動したあとの一杯は格別においしいが、アルコールは水分を吸いとる作用があるので、極力控えたい。また、登山する前日の飲酒もできれば控える。

 E虫よけに対処する。
 とくに虫が多い夏山では、虫などに気をとられ、集中力が散漫する。あらかじめ虫よけスプレーまたは、塗り薬などを携帯する。

 F毒蛇に遭遇した場合は落ち着いて対処する。

 夏山ではマムシなどの毒蛇に遭遇することも多々ある。状況に応じて落ち着いて対処する。万一かまれた場合は、応急処置としてタオル、ハンカチなどで心臓に近い方を縛る。また、傷口から毒をすいだすか、ナイフなどで傷口をきりだし、ただちに病院に向かう。

 G食料、飲料水はたくさん準備する。

 日帰りであれ、数泊を要する登山であれ、万一に備えて飲食物を豊富に携帯する。とくに飲料水は多めに持っていく。

 H緊急時の道具は必ず持参する。

 天候による不慮の事態に備え、ロウソク、マッチ、携帯電燈、携帯電話などは必ず持参する。また、道を誤った場合は慌てずに元(分岐点など)に戻る。登山口などには、登山記録を記する箱が用意されているので、そこに登山日程などを記録することを薦める。

 以上夏山の危険について簡単に記したが、読者のみなさんも日頃の運動不足解消と健康増進のためルールに従い、楽しい夏山登りを満喫することを願う。(談)

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