ベンチャー企業と在日同胞企業 〈上〉

無から有、短期間で急成長

金美徳


 朝鮮大学校経営学部の金美徳講師が「同胞経済研究」(在日本朝鮮人商工連合会発行)に発表したレポート「日本のベンチャー企業と在日コリアン企業の比較研究―アントレプレナーシップ(起業家精神)の分析を中心に―」の要旨を二回に分けて紹介する。

起業家精神、活動等に違い

 IT(情報技術)産業など、在日同胞の間でもベンチャー企業に乗り出す人々が少なくない。しかし、一から立ち上げ短期間で急成長を遂げたという点において、在日同胞企業自体が実は典型的なベンチャー企業と見なせるのではないか。そのような視点から日本のベンチャー企業経営の特徴と問題点を考察してみたい。

独自性に対する考察

 在日同胞企業は、お金、知識、技術、人脈などすべてにおいて何もないという、無から有を作りだし、短期間で急成長を遂げたという意味では典型的なベンチャー企業である。

 在日同胞企業は、日本で生まれ、日本で育ったという意味ではほとんど日本企業であるという見方もできるが、起業家精神をはじめとする経営理念を見た場合、やはり違いがある。

 私は、在日同胞企業は、日本のベンチャー企業とは「違い過ぎないが、違う」と考える。つまり、在日同胞企業は、日本の土壌、制度のもとで日本の消費者、企業と取引やビジネスを行っているので日本企業とはほとんど違わないが、起業家精神や経営理念、起業家活動や経営行動には違いが見られるということである。

 ここでは、在日同胞企業の「違いすぎないが、違う」点、すなわち独自性を明らかにすることで、日本のベンチャー企業経営、とくに起業家精神理論の再構築の糸口を見いだしたいと考える。

 しかし、これはあくまで在日同胞企業を対象にした一考察であることを断っておく。

違う1世と2,3世

 在日同胞一世は、祖国を奪われたがために多くの迫害や差別を受けた。祖国解放(1945年8月15日)後も、祖国の分断、祖国の建国・国家建設、統一への思いから、危惧、悲しみ、怒り、故郷・親兄弟への思いを消し去ることはできなかった。その思いが、ビジネスへの意欲をかき立てたと言っても過言ではない。

 したがって、1世の起業家精神は、「祖国の発展への寄与」、「在日コリアン社会・組織への貢献」、「日本の地域社会に貢献することによって朝鮮人、そして祖国の社会的地位や国際的地位を高める」という民族的倫理や朝鮮人としての社会的使命が多くを占めていたと言える。

 それを裏付けるものとして、1世がむやみにもうけようとしたり、規模の拡大を追求しなかったことが挙げられる。また、必要とあらば、祖国や在日同胞社会・組織、日本の地域社会に物心両面で積極的に貢献してきた。

 では、在日同胞2世、3世はどうか。1世の感性がコリアン(朝鮮半島の現地を指す)型8割、日本型2割とするなら、2世はコリアン型4割、日本型4割、在日同胞型2割と考える。3世の場合は、コリアン型2割、日本型5割、在日同胞型3割という1つの仮説を立てることができる。

在日コリアン型感性

 2世、3世の起業家精神の特徴は、在日コリアン型の感性が含まれていることだ。

 これは、長年にかけて同胞社会や歴史が形成される中で生まれた独自の文化であるとも言える。独自の文化とは、北南朝鮮の文化、日本の伝統的文化や欧米の影響を大きく受けた日本の現代文化がミックスされる中から生まれた主体性をもった文化である。

 在日同胞は、世代交代とともに在日コリアンとしての主体性、アイデンティティーをよりいっそう実現、具現、アピールしていくであろう。それはとりわけ、起業家や芸術、文学、
芸能、スポーツ分野で顕著に表れると考えるのである。
(キム・ミドク、朝鮮大学校経営学部講師)

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