春・夏・秋・冬

 今年ほど「梅雨明け宣言」に何の意味があるのかと思ったことはない。東京では、ほとんど梅雨らしい雨も降らずに終わってしまった感じだ。そして連日の猛暑。あまりの暑さに食欲が出ず、夏バテ気味の人も多いだろう。だが、食欲のない時だからこそ、体力をつけるためにしっかり食べなければならない

▼食欲増進に最適なのが、朝鮮料理の代表選手といえるキムチ。今の季節ならムルキムチ(水キムチ)が主流だが、やはりトウガラシのきいたペチュキムチ(白菜キムチ)が食欲をそそるにはもってこい

▼最近では、キムチが好物という日本人も少なくない。毎日新聞にコラムを連載中の小泉武夫・東京農大教授などは、おかずにすると、茶わん3杯ぐらいのご飯はあっという間に胃袋に入ると、その効果について指摘する

▼もちろん体にもいいが、その秘密は発酵作用にあるらしい。朝鮮の食文化と健康の関係に詳しい恵クリニックの韓啓司院長によると、白菜に大根の千切り、コチュカル(粉トウガラシ)、ニンニク、しょうが、アミの塩辛などを混ぜて漬け発酵させるため、これらの材料に含まれる栄養価が増強されるのだという。しかもキムチの名脇役であるトウガラシの薬効については、食欲の増進、だ液や胃液の分泌促進など、挙げればきりがない

▼「民族性を育むうえで、文化や言葉とともに食文化も欠かせない」とは、韓先生の持論。だとすれば、キムチのような「万能の食べ物」を作り出したご先祖に感謝しなくてはならない。朝鮮の食文化が世界に誇れるものであることは間違いない。(聖)

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