そこが知りたいQ&A

「つくる会」教科書はどうなった?

40都道府県で不採択見込み/行方注目される東京都の状況


   現在、日本各地では公立学校で使用する教科書の採択審議が進んでいるようですが、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書は結局どうなったのですか?

   歴史をわい曲した「つくる会」教科書の採択に反対する良識ある市民らの声を背景に、「つくる会」が目標とした「採択率10%には届かない情勢」(読売新聞1日付)のようです。

 公立学校における教科書の採択は、その学校を設置する自治体の教育委員会が決めるとされています。現行の制度下では、地域の公立中の場合は市区町村教委が、県立高や養護学校などは都道府県教委が採択権を持つことになります。

 また東京23区などを除く多くの地域では近隣の複数の市区町村が同じ教科書を選ぶ「共同採択制」を採用しており、通常は複数の市区町村にまたがる「採択地区」の採択協議会などが教科書を決定し、各市町村教委がそれを承認する形を取っています。東京23区などは単独の市区町村が1つの採択地区となります。

 7月半ばから各採択地区で始まった教科書採択の締め切りは今月15日。各種報道、調査によると、7月31日までに全国に542ある採択地区のうち少なくとも63%で事実上採択が終了しています。採択結果を明らかにしたのはその半分足らずの約170地区に過ぎませんが、そのすべてで「つくる会」教科書は選ばれていません。

 さらに報道によれば、採択結果の未公表地区や近く決定する地区のほとんどでも「つくる会」教科書の採択の動きはなく、すでに道府県内全地区の採択を終えたとされる北海道、栃木、群馬、新潟、静岡、徳島、佐賀、沖縄、京都、鹿児島などの13道府県をはじめ、「約40道府県の公立中学では、使用されない見通し」(毎日新聞2日付)だといいます。

   では、「つくる会」教科書はほとんど使用されないと思っていいのでしょうか。

   まったく使用されないわけではありません。

 国立、私立学校は各校の校長が教科書を決めますが、明らかになっているだけで6校の私立中学が「つくる会」教科書の使用を決めています。国学院栃木中(栃木市)、常総学院中(茨城・土浦市)、学法津田学園(三重・桑名市)、皇學館中(三重・伊勢市)、麗澤瑞浪中(岐阜・瑞浪市)が歴史を、生光学園中(徳島市)が公民を採用しました。校名を明らかにしていませんが、産経新聞7月13日付は20校が採択したと報じています。

 さらに予断を許さないのは、「つくる会」発足時の賛同人に名を連ねていた石原慎太郎知事の「お膝元」、東京都の状況です。東京都教育委員会は都立養護学校の一部(病弱・知的障害・ろう)で「つくる会」の歴史と公民の教科書を使用する見通しのようです。26日の委員会(非公開)で審議した結果で、正式決定は8月7日の臨時教育委員会で行われる予定だといいます。

 しかし、例えば知的障害の都立養護学校中学部に通う生徒約930人のうち、大部分の約910人は検定教科書を使用せず、絵本などを教科書として使っています。「つくる会」教科書が正式に採択されても使用されないケースが多く出てくるのに、「そもそもなぜ養護学校なのか」と疑問の声が上がっているのも当然でしょう。

 6人の委員のうち、石原知事が任命した、知事の「知己」である委員が5人を占める都教委。採択率の低さを横目に、ここに何らかの「意図」が存在することを感じざるを得ません。

 そうした意味でも、7月31日現在、54地区中41地区が未決定な東京都からはまだ目が離せません。激しい攻防戦で注目を集めた杉並区をはじめ採択の終わったすべての地区では不採択でしたが、今週、採択が行われる地区が多く、その行方が注目されます。

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事