3重の加害、前代未聞の暴挙

朝鮮の侵略被害者日本政府が入国拒否
市民ら各地で抗議集会


招いていた朝鮮の被害者が参加できず、抗議集会となった各地での集会(上から大阪、東京、名古屋)
 主賓のいない会場。日本政府による前代未聞の暴挙に、参加した日本市民らは怒りの声をあげた。――日本の市民団体が8.15に際して1986年から各地で開いてきた平和のための証言集会。これまでも、アジア各国から日本による侵略の被害者を招いてきた。今年は、初めて朝鮮の被害者を招いて大阪、名古屋、東京の3ヵ所で開く予定だったが、日本政府が入国を不許可。受け入れ準備に奔走してきた各主催団体はもちろん、内外から抗議の声が高まっている。各集会は、訪日予定だった強制連行被害者の安成得さんと崔★(广だれに異)天さん、日本軍性奴隷制被害者の郭金女さんの証言ビデオ上映などに内容を変えて予定どおり開かれた。7日の大阪集会には250人、9日の名古屋集会には150人、11日の東京集会には200人の日本市民と同胞がそれぞれ参加した。

過去の罪、封印図る

 大阪集会(「第16回アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む集会―朝鮮植民地支配最後の清算に向けて―」)では、日朝国交正常化交渉の早期再開、朝鮮の被害者に対する謝罪と補償の実現を求める「不戦の誓い」が参加者一同の名で採択された。

 開会のあいさつをした佐治孝典・「心に刻む集会」全国実行委員長は、「今回の入国拒否は、日本でのネオ・ナショナリズム台頭が危険な段階に達していることの表れだ」と断じた。

 経過報告をした集会事務局の上杉聡氏は、日本政府の入国拒否の判断は「過去の侵略戦争への反省がないことの表れ。戦争をできる体制を作ろうとしている」と指摘。「今後も日本政府に被害者の入国を求めていく」と決意を述べた。

 洪祥進・朝鮮人強制連行真相調査団事務局長も、事実をねじ曲げ入国拒否を正当化しようとした一部報道や内閣官房の対応を、「被害から目をそむけ自らが犯した罪を封印しようとするもの」だと強く非難した。

 準備のために訪朝し、性奴隷被害者の郭金女さんと対面してきた事務局の六田みちこさんは、「私を娘だと可愛がってくれた郭さんに申し訳が立たない」と涙ながらに語っていた。

 フォトジャーナリストの伊藤孝司氏は、来日を阻まれた3人の証言を映像やスライドで紹介し、「今、日本政府がすべきことは植民地支配に対する清算だ」と強調した。

本末転倒で言語道断

 東京集会(「平和のための証言集会」)では、今回の不当な入国拒否を「政治的な圧迫、自由と民主主義に反する暴挙」だとして抗議し、日本政府が@すべての被害者に謝罪、補償しA過去清算と日朝国交樹立に取り組みB過去清算のために関連する全資料を公開して真相究明を行いC歴史わい曲を許さず、歴史教育・平和教育を充実させるよう求めるアピールを採択した。また「韓国挺身隊問題対策協議会」、「太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会」がそれぞれ発表した抗議声明が紹介された。

 あいさつした土屋公献・元日弁連会長は、「(入国拒否した日本政府は)被害者を愚弄している」と怒りを露にした。

 経過報告をした戦後補償ネットワーク世話人の有光健氏は、「日本政府の措置は、過去の犯罪、またそれに対する補償と謝罪を拒んでいることに続く『三重の加害』で、絶対に容赦できない」と非難し、抗議を続けていくと明らかにした。

 南から訪れた「太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会」の金景錫代表は、「加害者が被害者に来てもらっては困るだなんて、本末転倒で言語道断だ。日本政府は、北と南が過去清算問題で手を結ぶのを一番恐れているようだが、今後も協力していきたい」と強調した。

 「平和のための証言集会」代表の西川重則氏は、「今回、入国不許可事件を起こした内閣府、首相官邸の責任は重い。あらぬ言いがかりをつけて私たちの集会の目的と意味をねじ曲げ被害者の入国を阻止してまで、小泉首相の靖国神社参拝を行おうとした。これがいったいどういうことなのかを考えるのは、私たち全国民の課題だ」と訴えた。

 日本の戦争責任資料センターの荒井信一代表は、「世界的な潮流は第2次大戦中の戦犯の入国禁止で、被害者の禁止なんて聞いたことがない。日本政府はどうやって今回の措置を正当化できるというのか」と強い疑問を呈した。

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