それぞれの四季

夢育んだ友情

姜龍玉


 夫・高隆志は12年前、広島の朝鮮学校に赴任した時、1年先輩の金先生に出会った。2人は共に社会科の授業を担当し、放課後はサッカー部の指導にあけくれた。情熱家で、熱血漢、そのくせ涙もろい金先生。気がつくと2人はいつも一緒で、酒を汲み交わしながら、時に口角泡を飛ばし、時に衝突しながら、夢を育んだ。

 それから1年、金先生はやむを得ない事情で千葉の実家で家業を継ぐため、学校を去ることになった。帰路に向うその日、執拗に引き止めていた夫を断腸の思いで振りきりながら、金先生は機上の人となった。短くても濃密な思い出がいっぱい詰まった教師生活との惜別。押し寄せる寂しさを抑えてふと窓の外を見ると、「遠くで隆志が、1人千切れんばかりに両手を振り続けている姿に涙がこぼれた」と後に金先生が話していた。

 別れを前に2人は夜通しで語り合って、夢を心に刻んだ。それから金先生は、毎年サッカー部の遠征費の足しにと送金し続け、夫がサッカー研修で外国に行くたびにその旅費を負担してくれた。そのお陰で、夫はサッカー部員たちと全国各地を駆け回り、貴重な勉強を重ねることができた。2年前の夏、夫はマイクロバスのハンドルを握って、北海道から広島までの15日間の遠征に出た。千葉に立ち寄った際、金先生が出迎えてくれた。

 その時のいがぐり頭の1年生部員たちが、今年8月、頼もしい3年生になって、熊本で開かれたインターハイの初舞台のピッチに立った。照りつける太陽が照らす広島朝高サッカー部員たちの輝く姿。金先生の目に光るものがあった。(主婦)

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