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なぜ、朝鮮在住被害者を入国拒否?

日本政府加害事実の封印を図る/国際的にも前例ない事件


   朝鮮に住む強制連行や日本軍性奴隷制の被害者の訪日を日本政府が拒否しましたが。

   既報のように、日本の朝鮮侵略による強制連行の被害者男性2人と性奴隷制の被害者女性1人、つきそいの「従軍慰安婦」・太平洋戦争被害者補償対策委員会の関係者計8人は4日から訪日し、日本の市民団体が大阪、東京、名古屋などで開く集会に参加する予定でした。招いたのは各集会の主催者。1986年から毎年夏、日本によるアジア侵略の被害者を現地から招いて証言を聞く集会を開いてきた日本の市民らです。

 集会には、これまで中国、南朝鮮、台湾、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどの被害者が参加しています。今年は、被害の実態調査など過去清算問題に関する朝・日民間交流の進展を受けて初めて朝鮮からの参加が決まり、関係者は準備に奔走してきました。

 関係者の話や各種報道を総合すると、当初は直接の窓口である法務省、関連省庁である外務省もОKを出し、首相官邸もその方針でした。しかし、外務省の槙田アジア大洋州局長が1日の自民党外交関係合同部会で「安倍晋三官房副長官と相談したが、とくに政治問題はないので入国を認めることにした」と報告したところ、一部議員からクレームがつき、首相官邸も態度を変更したといいます。そして3日午前、福田官房長官が記者会見で認めない方針を明らかにしました。

   何を入国拒否の理由にしているのですか?

   3日の記者会見で福田官房長官は「関係省庁間で協議した結果、入国を認めないことを決定したと報告を受けた。理由は総合的判断によるものだ」と述べました。外務省も「首相官邸と相談し、総合的に判断して入国を認めないことを決めた」と説明。公式的には「総合的判断」という以外、一切説明がありません。

 しかし、安倍官房副長官は「集会が小泉首相の靖国神社参拝に抗議する場になることを懸念し不許可の姿勢に転じた」(産経新聞3日付)と報じられており、10日、関係者が外務省を抗議に訪れた際に対応した杉浦副大臣は報道された経過を大筋で認めながら、「タイミングがまずかった」ことを匂わせたといいます。小泉首相の靖国参拝を「無事」に行うための「配慮」の一環であったことは間違いないでしょう。

   小泉政権が朝鮮代表団の入国を拒否するのは今回で2回目ですが。

   6月、やはり日本の市民団体が東京で開いた「歴史わい曲教科書を許さない!  アジア連帯緊急会議・集会」に参加を予定していた朝鮮の「従軍慰安婦」・太平洋戦争被害者補償対策委員会代表団の入国が拒否されています。

 通常、理由が明確ならば入国が拒否されることはほとんどありません。前回も今回も、朝鮮からの訪日者が参加しようとしていたのは、過去清算から目を背け続ける日本の姿勢が問われる場です。さらに今回は、まさに被害にあった当事者が訪日しようとしていました。そのような人々に来てもらっては困るというのは、犯した罪を封印しようとする姿勢にほかなりません。

 15日、政府主催の全国戦没者追悼式の式辞で小泉首相は、日本がアジア各国の人々に対して「多大の損害と苦痛を与えた」と指摘したうえで「深い反省の念」を口にし、国際社会から孤立しないよう近隣諸国との友好関係の維持発展に尽くすと述べました。このような加害の認定と反省の意思表明は九五年の「村山談話」以来、日本政府の公式見解となっています。

 しかし日本政府は、加害の過去を否定し正当化する歴史わい曲教科書を文部科学省の検定で合格させ、内外で大きな反発を引き起こしました。さらに小泉首相は13日、内外の憂慮の声にもかかわらず、侵略戦争を肯定する場である靖国神社を参拝しました。これだけ見ても、「加害認定と反省の意思」「近隣諸国との友好に尽力」とは大きくかけ離れていると言わざるをえません。

   このような事例は、世界的によくあることなのでしょうか。

   日本政府は、自国が過去に被害を与えた国の被害者が日本に来て証言するのを拒みました。世界的に見ても、加害国が被害国の被害者の入国を拒む例は「聞いたことがない」(日本の戦争責任資料センターの荒井信一代表)といいます。

 むしろ世界の潮流は戦犯の入国禁止であり、例えば米司法省は1996年12月、第2次大戦中に非人道的行為をしたとして、731部隊関係者と「慰安所」の運営に関与していた旧日本軍出身の日本人16人を管理リストに載せ、入国を禁じています。

 日本政府は、1日も早く自らの過去と世界の流れに正面から向き合わなくてはなりません。

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