京都地裁・浮島丸訴訟

謝罪、真相究明退ける

一部勝訴、日本政府に賠償命じる


 植民地支配時に強制連行された朝鮮人らを乗せた浮島丸が舞鶴湾で沈没し、500人以上が死亡した事件で、南朝鮮在住の生存者や遺族計80人が日本政府に公式謝罪と総額約30億の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。

 水上敏裁判長は、「国は強制連行者の安全な送還に配慮する義務を怠った」として生存者15人に対し1人当たり300万円、計4500万円の賠償を命じた。元軍属の乗船者は国との間に「旅客運送契約類似の法律関係が成立していた」として、安全配慮義務違反と判断したもので、「運行責任者」としての国の責任を認めたもの。

 しかし、公式謝罪、憲法前文・国家賠償法遡及適用による損害賠償、立法不作為、遺骨返還などの訴えは退けた。爆発についての真相究明を求めた訴訟だったが、国側は「原告は事故当時の具体的な状況を明らかにしていない」と訴えの無効を主張し、「沈没は不可抗力」との立場を貫いた。国側が提出した証拠は3点のみ。判決も爆発の解明に踏み込まなかった。

 判決後の記者会見で原告団代表の宋斗会さん(86)は抗議声明を発表し、怒りを込めて真相究明を要求。当時12歳で一家6人で浮島丸に乗船し、母・姉・妹を失った原告の張永道さん(68)は「本当に必要なのは真相究明。こんなちっぽけな金をもらっても仕方がない。日本の義務はアジアの被害者を弔うことだ」と語り、金泰錫さん(81)も「自分たちで自爆させておいてあんな判決で終わらせるとは許せない」と語った。

 原告側は公式謝罪を否定した裁判所の姿勢を歴史に残すとし、控訴しない方針だ。

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