毒劇物流出事件で米軍が裁判を拒否
SOFAの不平等性浮き彫りに
南と米軍が、「韓」米地位協定(SOFA)に規定された裁判管轄権をめぐって厳しく対立している。南の法務部が裁判を進行する事件について、米軍側が裁判管轄権を主張するのは今回が初めてのことで、政界はもちろん各界各層から反発の声が上がっている。同時に昨年末に改定されたSOFAの再改定を求める動きも徐々に広がりつつある。
在「韓」米軍は22日、漢江への毒劇物流出事件で正式裁判に付された、米第8軍34支援団のアルバート・マクファーランド霊安室所長に対する一次的な裁判権を行使することを表明し、内外に波紋を呼んでいる。 今回の事件は、当時副所長だったマクファーランドが死体防腐処理に使用するホルマリン廃溶液を漢江に無断で流したもので、昨年7月13日に市民団体によって明かされた。その後7月20日に刑事告訴がなされ、今年の3月23日にソウル地検はマクファーランドを罰金刑で略式起訴した。4月4日には裁判所が正式裁判に付すことを決定し、7月13日に起訴状を郵送で送ったが、米軍側は受け取りを拒否した。そして今回、米軍は起訴状の受け取り拒否を正式に発表するとともに、裁判権の行使を主張しているのである。 米軍側は22日に報道資料を出し、その中で「『韓』米地位協定(SOFA)によれば、ある個人が『韓国』および米国の法律を違反し、その行為が勤務遂行中になされた場合は、米軍側が一次的な裁判管轄権を所有している」としながら、「われわれはすでに30日間の定職処分を下すなどの裁判管轄権をすでに行使している」ことを明かした。また、「去る4月12日には法務部あてに一次的な裁判管轄権を行使する旨を伝える文書を送ったが、法務部からは何の異議も提起されなかった」と付け加えた。 これに対し南の検察側は、「マクファーランドの起訴後、米軍が送ってきた文書にはマクファーランドに対する懲戒管轄権に関する言及があっただけで、裁判管轄権に対する明らかな言及はなく、異議を提起しなかった」と反発している。同時に、「検察がマクファーランドを略式起訴し、裁判権を行使したときも米軍側は異議の提起をしておらず、500万ウォンの罰金もすでに納付している」ことも明らかにした。 国会の統一外交通商委員会の与野党議員3名も23日に声明を発表し、「米軍司令部が、マクファーランド事件に対するわが国の裁判所の正当な裁判管轄権行使を拒否したのは、SOFAに明示された『平和時におけるわが国の裁判管轄権行使』の条項に正面から対峙するもので、米軍当局の賢明なる対応を促す」と指摘した。 駐「韓」米軍犯罪根絶運動本部と不平等なSOFA改定国民運動などの市民団体も同日、裁判管轄権を主張する米軍を厳しく非難した。 今回の事件により、SOFAの規定にはあいまいな点が多く不平等なものであるということが改めて浮き彫りにされた。SOFAの第22条3項は「駐『韓』米軍は、合衆国軍隊の構成員や軍属およびその家族が犯した公務執行中の作為あるいは不作為による犯罪に対し、裁判権を行使する第一次的な権利を有する」としている。米軍はこれを根拠に前述のような主張をしている。一方南が根拠としているのは、「合衆国軍当局は平和時には、軍属および家族に対する有効な刑事裁判権を有していない」と明示した合意議事録の規定。いずれにせよ、現時点では南の法務部と米軍の意見は平行線をたどっている。 しかし今回の事件でもっとも肝心なことは、不特定多数の人々の生命を脅かす毒劇物を一般河川に流すことが、果たして公務として認められるのかということである。米軍は公務執行中の行為であるとの主張を繰り返しているが、人体に致命的な影響を与えるホルマリン廃溶液を漢江に人知れず流すということは、常識的に考えれば犯罪行為以外のなにものでもない。 今回の毒劇物流出事件は、在「韓」米軍のごう慢さを見せつけるとともに、SOFAからもかいま見える南と米国の不平等な関係の産物といえる。昨年の6.15共同宣言の精神にのっとった民族自主を求める声が南でも日に日に高くなっている。 |