自国の利益追求に狂奔する米国

国連人種差別撤廃会議への不参加を決定


 米国務省は27日、南アフリカのダーバンで31日から9月7日まで開かれる国連主催の「反人種主義・差別撤廃世界会議」に、パウエル国務長官が参加しないことを正式に発表した。

 国務省のバウチャー報道官は、「われわれが最も憂慮しているのはイスラエルが世界各国から集中砲火を浴びせられ、会議資料の相当部分がイスラエルを重点に論議されている点」としながら、「今回の会議への全面ボイコットも検討している」と指摘し、パウエル長官の代理として下級代表団を派遣することすらキャンセルする可能性をも示唆した。

 米国の決定に従いイスラエルも不参加へと傾きつつあり、会議自体が骨抜きになるおそれもある。

 今回の米国の決定は、ブッシュ大統領が24日に「シオニズムを人種差別とし、イスラエルへの非難を続ける限り今回の会議には代表を派遣しない」と発言したことで、ある程度予測されていた。

 26日付のロサンゼルス・タイムズは、パウエル国務長官が国連人種差別撤廃会議への不参加を決定したことで、国内外からの非難を受けざるを得なくなったと指摘した。同紙はブッシュ政権高官の言葉として、「ライス安保補佐官が主導した今回の決定は、人権意識向上のための国際社会の努力に冷水を浴びせるもの」としながら、「自叙伝を通じて人種差別の深刻性と撤廃を主張し、会議への参加意思を重ね重ね表明していたパウエル長官の不参加は、内外の大きな失望と怒りを買うことになるだろう」と展望している。米国内の専門家らも、会議への不参加はその間米国が積み重ねてきた権威と影響力、主導権を弱めるものと分析している。

 78年、83年にジュネーブで開催されてきた同会議には今回、150余ヵ国から閣僚級の政府代表と、3000を超えるNGO(非政府組織)が参加する。同会議は、世界各地にまん延する人種差別が、日常のほとんどの部分に影響を及ぼしているという認識のもと、人種差別撤廃条約の採択、同条約の順守状況をチェックする人種差別撤廃委員会の設置など、人種差別をなくしていくための解決法および対応策を模索する場となる。

 とくに今回は会議開催の前から、イスラエルのシオニズムとパレスチナ人の領土に対する占領を人種差別として非難するかどうかという問題と、過去の奴隷制度や植民地主義に対する謝罪と補償問題などで当事国間の厳しい対立があった。結果としてアラブ諸国は、今会議ではイスラエル問題を取り扱わないことで合意した。にもかかわらず、ブッシュ政権は会議への不参加を決定したのである。

 京都議定書からの脱退やMD(ミサイル防衛)計画の推進など、ブッシュ政権のごう慢なまでのユニラテラリズム(一国主義)の追求はとどまることを知らない。それどころかブッシュは、「米国の日程に沿ってABM(弾道弾迎撃ミサイル)協定からいずれ脱退する」(23日、休暇中のテキサス州クロフォードにて)と、公言してはばからない。

 多極化へと進む世界の流れを後目に、ひとり一極化という20世紀の「夢」を捨てきれずにいるブッシュ政権。それがもはや全世界から許されざる行為であるということに、そろそろ気づくべきではないのだろうか。

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事