焼肉激戦区−繁盛店

「伝統の味」辛目の味噌ダレ

東京・歌舞伎町、炭火焼「味楽亭」


半世紀にわたり守る

 日本を代表する繁華街、東京・新宿歌舞伎町に店を構えて約40年になる炭火焼肉「味楽亭」。その辛目の味噌ダレは、日本各地にファンがいるほど知られている「伝統の味」だ。

 会長の李春龍さん(49)のオモニが祖国光復(1945年8月15日)直後、広島県内で始めたホルモン焼が出発点だ。その「伝統の味」を、半世紀以上にわたって守ってきた。

 歌舞伎町には、低価格チェーン店から高級店まで数10の焼肉店がひしめき、職安通り、大久保通りにはコリアタウンが形成されている。

 文字通り超激戦区だが、この店(41席)は夕方の6時ごろには満席になる。その秘訣は何か、李会長は次のように語る。

 「伝統の味とその看板を頑固なまでに守っていることでしょう。つまりお客様がいつ来ても料理を同じ味で提供し、大衆的な雰囲気で気軽に食事を楽しんでもらうことだと思う」

 その「伝統の味」、辛目の味噌ダレだが、作り方はむろん「企業秘密」。しかし、特別な調味料は一切使っていない。

 肉、とくに人気のテチャン(大腸)やセンマイ(第3の胃)、ウルテ(のどぼとけ)などの内臓類は、当日にさばかれた生のものを仕入れている。肉を柔らかく見せるための切れ目を必要以上に入れなくてもすむ。

 さらに開店以来、七輪にこだわり続けている。80年代に入り、煙とにおいの問題を解決し、新たな顧客獲得を目指して無縁ロースターが登場したが、同店では昔ながらの肉の食感を楽しんでもらうために、従来の有煙式にこだわってきた。

年間を通じて効率よく

 「伝統の味と看板を守る」一方で、超激戦区だけにコストパフォーマンスをはかる努力も怠らない。

 まずは食材。バラは脂身の部分を省いて購入すれば、大きなコストダウンにつながる。また、人気のないハツとレバ焼は置いていない(生レバ刺は有)。焼肉メニューの数は10種15点で、他店と比べてそれほど多くはないが、顧客のニーズに十分に応えられるものになっている。

 こうしたコストダウンは「当然、お客様に還元しています」(李会長)。

売り込みで人気商品に

 珍味の一つに数えられるウルテ。関西地方では古くから親しまれてきたが、関東地方で知られるようになったのはごく最近のことだ。

 同店では10年ほど前、歯ごたえがあり、かつまろやかな味のウルテに着目し、人気メニューにしようと量にして100グラム以上を無料で提供した。

 「当初、その見栄えからか、日本人のお客様の反応はいまいちだったが、回を重ねるにつれよい反応が出るようになり、オーダーを受けるようになった。実際に食べて美味しいと感じたからだ。つまり、お勧めメニューは積極的に売り込み、ヒット商品、人気商品に作っていくという努力も必要だ」(李会長)。

 この店にはホルモンをはじめとする内臓系を目当てに来店する客が多いが、最も多く出るのはやはりカルビだ。実はこのカルビ、リブロースをぶつ切りにして提供している。

 こうした努力によって、「納得のいく料理」を提供している味楽亭。今後も「伝統の味と看板」を守りながら、「オモニの味、在日の文化をここ新宿で堅持していきたい」と李会長は語っていた。(羅基哲記者)

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