必ず必要な民族金融機関
近畿3地域の発起人ら
新信組の年内開業、固い決意で昼夜取り組む
本紙既報のように、大阪・和歌山・奈良、兵庫、京都・滋賀の近畿3地域の同胞商工人を中心とする発起人たちは、8月9日までに朝銀近畿の受け皿として新しい民族金融機関の設立認可を受けるための予備審査を近畿財務局に申請した。出資金、事業計画、人材が具備されたことを受けてのもので、新信組の設立作業が法的な手続きの段階に入ったことを意味する。この間、3地域の発起人らは、昼夜をいとわぬ努力を傾けて、新しい民族金融機関の設立に向けて活動してきた。朝和信用組合(仮称=大阪・和歌山・奈良地域)発起人の夫敬子さん(59、大阪市在住)は、「鶴橋の朝鮮市場で働く1世のオモニたちは、毎朝4時、5時から働いて得た日銭を朝銀に預けていた。そんなオモニらにとって、朝銀の破たんは子供に裏切られた気持ちだったと思う。しかし、今回怒りをぶつけながらも、民族金融機関は必要だと協力してくれた。そんな同胞たちの期待に応えたい」と語る。各地域では年内の開業をめざし、出資金の目標額を達成するため、最後の拍車をかけている。(張慧純記者)
同胞の熱い思いを魂に 大阪では、残念ながら朝銀が2回破たんしたが、同胞たちのショックは相当なものだった。 今後の問題を議論する中で、「1世が作った組合がなくなってもいいのか、灯火を消してはだめだ」と立ちあがったのが発起人だった。彼らは大阪、和歌山、奈良地域に16の「支援する会」を作り、民族金融機関の必要性を同胞に切々と訴えていった。来年3月まで受け皿機関を作らなければ再生できなかったからだ。 同胞たちは複雑な気持ちを抱きながら、新信組設立問題に向き合わねばならなかっただけに、非常に悩まれたと思う。同胞たちの協力にこの場を借りて深く感謝したい。 今後、同胞らの熱い思い、期待を新しい民族金融機関の魂にしていくことが1番大事だと思う。これは単純な作業ではない。 「新しく生まれ変わる」ということは、原点に戻ることだ。本来朝銀は中小、零細の同胞業者を対象にしていたが、バブル時には大口、一部業者に偏った。そこから教訓を学び、同胞に目を向けた同胞の信用組合を作っていく決意だ。 団結して健全な信組を 予備審査の申請は、民族金融機関の再生作業が最終段階に入ったことを意味する。審査を終え、内認可が下りれば、開業に向けた実務的な作業に入ることができるからだ。 深まる不況の中で、民族金融機関がなくなれば多くの同胞企業が連鎖倒産するのではないか、同胞の経済地盤が分解してなくなるのでは、という不安が兵庫中を襲った。 たび重なる討議の結果、同胞の生活向上、地域社会発展のためにも新しい民族金融機関は不可欠との意思を確認し、協力を求めて必死に走り回った。 出資金を集めることは簡単ではなかったが、発起人たちが運動の核になって率先して出資をし、各地域の説明会に赴き、厳しい批判を受けながらも運動を担っていった。 出資金の集まりが鈍ることもあったが、発起人を中心にふんばり、7月に出資金を集められなければ信組設立は断念せざるをえないという不退転の覚悟で取り組み、予備申請にこぎ着けた。 何よりも、同胞のための健全な信組を作らなければならない。そのために、新信組は理事会の機能と役割を高め、透明かつ健全な経営を実現していきたい。 最後に、出資金募集運動に商工人、同胞が一丸となり、新しい民族金融機関の設立にまい進してくれることを望みたい。 同胞社会再生の原動力 深刻な不況の中で同胞を取り巻く経済状況は本当に厳しい。同胞が多く従事する建設、金融、パチンコなどの業種を見ても倒産が相次ぎ、安泰といえるケースはごく一部だ。友禅、西陣などの伝統的な繊維産業も同様だ。 そんな中で朝銀が破たんした。同胞の多くは、手形を割れず、運転資金が工面できないとなると、商売にならない。さらに、中小零細企業が圧倒的多数を占める同胞企業にとっては効率化、選別化政策を追求する日本の金融機関との取り引きは難しい。そのことを肌で感じている発起人、準備委員だからこそ、地域に密着した新しい民族金融機 新しい民族金融機関に対する同胞の要望は健全性、透明性、法遵守、情報公開ということに集約される。 こうした声に沿った民族金融機関を再建できれば、同胞社会再生の動力になると確信している。今までう余曲折はあったが、京都の同胞社会を担う人材は着実に育っているからだ。 京都、滋賀の同胞が一致団結すれば、必ず設立出来ると確信している。 |