国家責任で抜本対策を

厚生労働省の在外被爆者検討会、1000人の北の被爆者「国交ない」と切り捨て

広島・長崎市長ら早期救済を強く促す


 被爆者援護法の適用対象から在外被爆者を外した厚生省(当時、現在の厚生労働省)通達は不当とする大阪地裁判決(6月)を受け、坂口力厚生労働大臣は7月9日、「在外被爆者に関する検討会」(座長・森亘日本医学会長)を発足させた。被爆した朝鮮人被爆者は現在、北南朝鮮に3000人いるが、検討会の聞き取りの対象から北の1000人の被爆者は排除されている。日本政府には、過去清算の一環として彼らに対する抜本的な対策を講じる義務がある。(張慧純記者)

日本の犯した罪

 在外被爆者の多くを占めるのは、北南朝鮮に住む被爆者だ。

 4日、同省で行われた第2回検討会では秋葉忠利・広島市長、伊藤一長・長崎市長と在外被爆者問題に詳しい袖井林二郎・法政大学名誉教授が意見を述べ、朝鮮人被爆者を被爆者援護法の適用対象とするなど、一刻も早く救済するよう日本政府に促した。

 伊藤長崎市長は、長崎の外国人被爆者の圧倒的多数が朝鮮人被爆者だったとして、彼らは市内の軍需工場や軍事施設に強制連行されたすえに被爆したと指摘。帰国後も医療や生活の面で苦しんでおり、日ごとにその苦しみはひどくなっていると述べながら、通達1つで在外被爆者を援護の対象から切り捨てる政府のやり方を非難した。

 また袖井教授は、「日本が朝鮮に犯した罪を考えた時、日本政府自らが国家の責任において被爆者を探し出し、専門病院を建てるなど、抜本的な措置を講じるべきだ」と強調した。

姿勢そのものが問題

 伊藤長崎市長の指摘を待つまでもなく、北南朝鮮の被爆者たちは日本の植民地支配により渡日を余儀なくされたすえに広島や長崎で被爆した人たちだ。朝鮮人被爆者をはじめ在外被爆者を援護法の対象とするのは日本政府に課せられた最低限の義務で、日本政府は過去清算の一環として抜本的な対策を講じる義務がある。

 現在、朝鮮半島には北に約1000人、南に2300余人の被爆者が暮らす。日本政府は南側被爆者に対しては渡日治療や治療基金を提供したことがあるが、いずれも不十分かつ一時的なものだ。

 北の被爆者に関しては「国交がない」という理由で完全に切り捨ててきた。

 この姿勢は検討会でも貫かれ、厚生労働省は、検討会で行われる在外被爆者本人の聞き取りの対象を北米、南米、南朝鮮のみに限定し、北の被爆者は最初から外した。

 在朝被爆者問題の解決に尽力してきた在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根会長(72、広島市在住)は、「朝鮮の被害者の声を聞くという姿勢そのものがない。朝鮮では反核平和委員会が独自の調査および認定、医療活動を行ってきたが、同会が認定した被爆者は援護法の適用対象とすべきだし、そもそも半世紀以上も放置してきたことを謝罪すべきだ。国交がないことは理由にならない」と話す。

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