現場から−李紅培(朝青北海道本部委員長・29)
過去を探り未来を創る
朝鮮人犠牲者の遺骨発掘/日本、南の友人とともに
8月、北海道で東アジア共同ワークショップが開かれた。日本人と在日朝鮮人、南朝鮮の若者が集い、東アジアの未来をともに考えることを目的に1997年から始まったイベントで、1回目は、道内の雨竜ダム建設や深名線鉄道工事で犠牲になった朝鮮人と日本人の遺骨発掘作業を行った。その後大阪、ソウルと場所を移し、今年再度北海道で開催することになった。
メイン行事も4年前と同様、雨竜ダム工事犠牲者の遺骨発掘作業をするという。強制連行で犠牲になった朝鮮人の遺骨を掘るというので思い切って参加することにした。北海道朝鮮初中高級学校の教員、朝大生にも呼びかけ、10人が集まった。 日本人50人と在日朝鮮人20人、ソウルから来た同胞30人が寝食をともにしながら、名もない犠牲者の遺骨を発掘する非日常の体験。炎天下の中、汗を滝のように流しながら「半世紀前の闇」を探るためスコップをふるった。われわれは、戦時下の過酷な労働によって犠牲になった朝鮮人あるいは日本人と思われる2体の遺骨を発掘、追悼し、遺骨を「旧光顕寺・笹の墓標展示館」に安置した。 ◇ ◇ 50余年前の空もこんなにも澄んでいたのだろうか。しかし、人々の心は荒れていたと思う。支配と被支配、殺す側と殺される側…。恨みに満ちた風景がこの場所に広がっていたのだ。 遺骨を掘ったのは犠牲になり、また、犠牲を強いた人々の孫にあたる世代だ。半世紀を越えた今、われわれは手に手を取り合い、過去に何があったのか、その事実をともに探った。「過去を探りながら未来を創る」ことを肌で実感した。 しかし、ワークショップに参加した日本人の多くは、南朝鮮については詳しいものの、在日朝鮮人の友人はいないと言った。 ワークショップでは発掘作業のほかにも6つのテーマに沿ったフィールドワークが行われ、事務局の一員として名を連ねた私は、その1つ「北海道と在日朝鮮人社会」のコースを担当した。北海道初中高や総聯、民団本部の事務所を訪ね、同胞社会の今を伝えるのがねらいだ。 日本の若者に等身大の在日朝鮮人の生活を見てほしいと思い、北海道初中高の3世教員と参加者の座談会を企画した。参加した日本人のほとんどが、在日と初めて触れ合ったと言った。「こんな近くに住んでいたんだ…」。 ◇ ◇ 教科書や靖国神社参拝問題など、今の日本と朝鮮半島の関係は決して良好ではない。 直接的な犠牲者・当事者ではない若者にとって、被害者や加害者を決めて、「この人間が悪かった」と責任を被せることは、根本的な問題解決にはならない。問題は、半世紀前の日本と朝鮮が支配と非支配の関係にあったという事実と、今も互いに分かり合えていないという現実だ。しかし、学校教育の場で朝・日間の正しい歴史を教えられない日本の若者は、その溝を埋めるきっかけ、方法すら知らない。 偏狭なナショナリズムが台頭している今だからこそ、個人と個人が出会い、その出会いを育て、共感する営みを大切にしたい。 9日間にわたる交流の過程で、互いが一歩踏み出すことで新しい出会いが生まれ、気持ちが通うこと、その積み重ねが両国の豊かな関係につながると強く感じた。 |