春・夏・秋・冬

 1997年に劇場公開され大ヒットした映画「タイタニック」がテレビ放映された。事前に「日本特別編集版」と宣伝したのが功を奏してか、瞬間最高視聴率42.7%を記録した。主人公がヒロインの命を救うクライマックス。北極圏の冷たい海に長時間入っていれば当然、体温が下がり死に至る。主人公は海に浮いた船の残骸物にヒロインを乗せる。結局、それでヒロインは命を救われる

▼人間いざとなったら、これだけとっさの判断ができるだろうか。もちろん、映画の上のことなので、実際はこんなにうまく行くとは限らない。だが、「事実は小説より奇なり」。とっさの機転が身を救った出来事は数多い。神奈川県で、元交際相手に監禁された女性が、宅配ピザを配達に来た店員にSOSのメモを渡し助かったという事件があった

▼約1ヵ月間、海の上を漂流していた男性が無事救助されたのはつい最近の話だ。積んでいた食糧や水がすべて切れてしまったにもかかわらず、男性が生き延びることができたのも、とっさの機転だった

▼釣った魚を食べて飢えをしのぐのは、ある程度考えられる。しかし、この男性がすごいのは、海水を汲んでやかんで沸騰させた後、ふたについた水滴をためて水分補給をした点。記者会見で彼は「最後はなるようにしかならないと思った」と話した。あきらめではなく、無欲の状態が彼を救ったとも言えよう

▼新宿・歌舞伎町ビルの火災の例を見るまでもなく、いつどこでどんな災害に合うかわからない現代。そんな時、人間を救うのは判断力と無欲さかもしれない。(聖)

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