豊かな心にふれてほしい」

李慶子さんの「テウギのとんち話」
日本の小3教科書に掲載


 日本の小学校3年生の国語教科書に、民話作家で本紙の「こども昔話」の筆者でもある李慶子さんの「テウギのとんち話」が昨年4月(99年文部省検定済)から掲載されている。

 掲載したのは、教科書会社では最大手の東京書籍。同社発行の小学校国語教科書に朝鮮の作品が登場したのは、在日同胞作家李錦玉さんの「へらない稲束」に次いで2度目。なお、李錦玉さんの民話「3年とうげ」は、光村図書出版発行の小学校三年教科書で90年から採用されている。

 李慶子さんの「テウギのとんち話」は――。

 その昔、朝鮮のあちこちに、ソダンという、子供のための学問道場があった。修行が厳しくて、そこには長いひげをひざまでのばした先生が、白いパジ・チョゴリを着て、いつもこわい顔をしていた!  そこで学ぶテウギと偉い先生との痛快なやりとりがこの作品の核となっている。到底かないっこない相手を奇想天外な発想で負かしてしまうとんち話はとても新鮮。

 儒教色の強い朝鮮では、目上の人に逆らうなど、思いもよらぬこと。まして学問の師となれば、格別である。とはいっても、子供はいつの世も、あの手この手で大人をやりこめようとする。テウギの知恵と先生の知力。その攻防戦が何ともおかしい。

 この教科書の編集を担当した東京書籍の山野則子さんは「作品の温かさを朴民宜さんのさし絵が包み、とても好評です。民族によって風習の違いこそあれ、民話には家族への思いなど共通するものが必ずあります。この作品に触れて、もっとも近い隣国である朝鮮半島の人々の豊かな心に触れてほしい」と述べ、今後も朝鮮や外国の作品を多く取り上げていきたいと、意欲的に語った。

 李慶子さんの話  約20年前、私は、関西の公立小学校に設置されている民族学級の講師を務めたことがあった。関西に移り住んだばかりで関西弁を話せないうえ、未熟さも手伝って子供たちの心をつかむことができなかった。標準語で話す講師は子供たちには、よそよそしく感じられたかもしれない。その頃に児童文学を始めたのだが、原稿用紙を前にしたとき、私にそっぽを向いた子供たちの顔が浮かんだ。ためらわず、関西弁でお話を作ることに決めた。こうして世に送り出したのが「テウギ」。この試みは成功し、テウギは関西の子供たちに愛された。教科書に載せるにあたって、標準語に改めた。

 日本の子供たちが、この話を通して、自然に隣国の文化を身近に感じ、理解してくれれば、作者としてこんなにうれしいことはない。

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