夢と愛、涙とせつなさと

「笑うボクサー」 洪昌守著、アミューズブックスより


 昨年8月、在日朝鮮人初のボクシング世界チャンピオンが誕生した。その名は本名、洪昌守(徳山昌守)。

 東京朝高出身であることを堂々と名乗り、家族をこよなく愛する普通の在日朝鮮人青年。

 強さはもちろん、率直さと気取りのなさ、おおらかさ、女性に対する身についた優しさなど、彼自身の人間的な魅力が今の「洪昌守ブーム」を引き起こしている。本書もそうした洪昌守の素顔をズームアップしたものとなった。

 さて、本書からピックアップすると――。

 「チャンピオンとなった今も家賃5万円、築35年のアパート暮らし」

 「好きな曲は三木道三の『Lifetime  Respect!』」

 「チャンピオンだけど、パンチングボールは打てない」

 「とにかくお酒大好き!」

 「根っからのロマンチストでついには、リングの上で愛する彼女にプロポーズ」

 「父親をこよなく尊敬する」

 「試合前には必ず『遺書』を書く」

 大きな字とカラー写真満載。装丁もよく、読みやすい工夫がこらされている。何よりも標題の「笑うボクサー」がいい。さっと読める。

 27歳のチャンピオンが語る、笑いあり、涙ありのせつない物語。

 普段着の飾らない暮らしぶりとボクサーとしてトレーニングと減量に明け暮れる洪昌守。24日、元王者ジェニー・ペニャロサを迎え、3度目の防衛戦に挑む。

 在日同胞は今、息をのみ祈りを込めて、洪昌守の勝利を待ちわびている。

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