国連の各条約機関で相次ぐ勧告  朝鮮学校の制度的保障

具大石・教職同委員長に聞く


 本紙既報のように国連・社会権規約委員会が8月31日、朝鮮学校を正式に認可して財政補助をし大学入学資格を与えるよう日本政府に勧告した。国連の条約審査機関が日本政府に民族教育・朝鮮学校差別是正を勧告したのは、子どもの権利委員会、自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会に次いで4回目のことだが、日本政府の姿勢は変わらない。今後民族教育の権利保障を求める運動をどのように進めるべきか。在日本朝鮮人教職員同盟の具大石委員長(東京朝鮮中高級学校校長)に話をきいた。(張慧純記者)

 ―国連勧告の意義について。

 今回の勧告で日本が加入する主要な国際人権条約の審査機関がすべて、民族教育への差別撤廃を求めたことになる。在日同胞が民族教育を受ける権利の正当性が、国際社会でもゆるぎない常識になったことを意味する。総聯が国連で1990年代初頭から一貫して運動を進めてきた結果だ。

 国際社会だけではない。日本弁護士連合会も98年2月、朝鮮学校をはじめとする外国人学校の教育に関して重大な人権侵害があるとして、橋本龍太郎首相、町村信孝文部相(ともに当時)に差別を解消する処置を講じるよう、勧告している。

 しかし、日本政府はいまだに「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養(かんよう)することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって各種学校の地位を与える積極的意義を有しない」とする1965年の文部次官通達が有効だとしている。朝鮮人が朝鮮人として生きる権利を否定するものだ。

 日本政府は内外の指摘を受け入れ、その流れに逆行する行為を一日も早く是正すべきだ。朝鮮学校に学校教育法に定める「一条校」と同じ資格を与え、私立学校と同等またはそれ以上の助成金を支給しなければならない。

 ―今後、教育権獲得運動をどのように進めるべきか。

 今こそ全同胞、全組織をあげて運動を進める時だ。国連の各条約委員会が出した勧告は、その有効な武器になる。

 民族教育は在日朝鮮人運動の生命線。民族教育が制度的に保障されてこそ、在日同胞の幸せな未来が保障される。

 現実的に保護者の経済的負担は限界に来ており、経済的な理由や朝鮮学校に各種資格が与えられないことから日本学校を選択する同胞も多い。民族教育の確固たる法的基盤を確保してこそ、より広範な同胞の子供たちが民族的アイデンティティーを育んでいける。

 そのような意味で、日本政府に対し、民族教育に関わるすべての権利を認めさせることは、歴史的な課題であると同時に今日的課題だ。今を好機ととらえ、日本政府とのたたかいに決着をつけなければならない。

 ―具体的な運動について。

 今後、中央、地方レベルでち密な戦略を立てて運動を進めていく。とくに地方レベルでは総聯本部に設置された民族教育対策委員会を中心に、地域の実情に合った運動内容、方法、形態を練り、運動に着手することになるだろう。長期的な運動になるだけに、優秀な人材で担当チームを編成すべきだと思う。

 運動を進めるうえで何より大事なことは、同胞の権利意識を高め、日本の市民、行政、議員の中で朝鮮学校に対する支持世論を盛り上げることだ。そうしてこそ、国連で醸成された世論を日本社会に持ち込むことができる。

 また、日本国内の裁判所でも国際条約を根拠にした判決が増えてきているだけに、法廷闘争も視野に入れるべきだ。

 ―展望は。

 この運動で勝利すれば、保護者の経済的負担を軽減し、朝鮮学校の生徒数を増やすことができる。同胞社会に希望をもたらす運動になると確信している。

 日本社会の右傾化、民族金融機関の再建問題など、同胞社会では先行きに対する不安や課題が山積している。しかし、今こそ長期的な視野に立ち、民族教育の権利を獲得するという一点で同胞が一致団結しなくてはならない。

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