ざいにち発コリアン社会
同胞に夢与えるバレリーナに
神戸朝高卒、ドイツで学ぶ李賢雅さん(18)
今年7月のバレエ学校進級試験に合格し、校長と喜びを分かち合う(右が李さん、本人提供) | ローザンヌコンクールでの李さんの演技(昨年1月、本人提供) |
今年3月に神戸朝鮮高級学校を卒業した李賢雅さん(18)は現在、ドイツでクラシックバレエを学ぶ。バレエの魅力にとりつかれて15年。昨年1月には、若手バレリーナの登竜門と言われるスイス・ローザンヌ国際バレエコンクールに、在日同胞としては初めて出場する快挙を成し遂げた。「国際的な舞台で踊り在日同胞に夢を与えたい」と意欲は満々だ。
兵庫県伊丹市で生まれた李さんが、バレエスクールの門をたたいたのは3歳の時。「きれいな動きに子供心にもひかれるものがあった」という。 毎日スクールに通うかたわら、中級部からは舞踊部にも所属した。バレエと朝鮮舞踊という異なる2つの踊りを体に叩き込んできた。 朝高でも順調に腕を磨いてきた李さんに訪れた転機。それが昨年の第28回ローザンヌ国際バレエコンクール出場だった。 毎年開催される同コンクールは、テレビ放映されるほど由緒あるものである。「バレリーナなら一度は立ってみたい舞台」。李さんは迷わず申込書をしたためた。 コンクールでは、日本国内とスイスで、基礎動作とレッスン風景をチェックする「バー」と呼ばれる1次予選が行われ、突破すると実際にトゥシューズを履いて振り付けをする2次予選、規定作品を踊る3次予選へと進む。ここで合格すると、いよいよ衣装を着けて舞台に上がる本選への出場権を得られる。100人を超える参加者が、この時点で15人ほどに減ってしまうという狭き門だ。 李さんは、3次予選まで勝ち進んだものの、惜しくも本選出場は果たせなかった。「本選では朝鮮舞踊を踊るつもりだった」だけに悔しかったが、それ以上に「自分の可能性を確認できた。やればできることに気づいたのは大きな収穫でした」と、いたって前向きだ。 このコンクールを見ていたドイツ・ミュンヘンバレエ学校のコンスタンツヴェルノン校長(ミュンヘン国立バレエ団芸術監督)に見出され、李さんは同校への留学を勧められる。李さんは当時、神戸朝高に在学中だったが、学校側が通信教育という形で卒業まで籍を置くことを認めてくれた。李さんは昨年9月、同校に入学した。 同校では、下は6歳から上は李さんと同年代まで幅広い年齢の生徒が学ぶ。今夏には奨学金を得るための進級試験にも見事パス、9月からはドイツでの生活も2年目に入った。 「ドイツ語が難しくて大変です。買い物をする時など日常生活に必要な会話は、どうにか話したり聞き取ることはできるようになったけど、まだまだ…」 しかし、娘を1人異国の地に送っている両親の心配をよそに、バレエ漬けの日々も、今の李さんはとにかく楽しくて仕方ないようだ。 「バレエは外見の美しさだけでなく、内面的な部分がより要求される奥の深さが魅力なんです」。今も、時間があれば絵画鑑賞したり風景を見たり、自分なりに「バレエの表現に必要な感性を養っている」という。 李さんの場合、朝鮮舞踊の体験が、バレエの表現力にいっそう、磨きをかけることにプラスになったようだ。「バレエと朝鮮舞踊で培った表現力が認められて留学が叶ったのだから、こんなに嬉しいことはない」。 3年制の同校を卒業した後は、現地のバレエ団に入団して、一日も早くプロのバレリーナとして舞台に立ちたいと語る李さん。「表現者である以上、同胞に常に夢と希望を与えるバレリーナになりたい」。 これからバレエを始めようという同胞の子供たちには、「まずバレエを心から好きになってほしい。そして、うまく踊ることだけではなく、内面を磨いてほしい。そうでないと、こんな厳しい練習、毎日できませんよ」と、屈託のない笑顔を見せた。(柳成根記者) |