各界人士 新年のあいさつ
高句麗壁画古墳の世界遺産登録へ
東京芸術大学学長 平山郁夫
新年、おめでとうございます。今春はいよいよ、私が長い間願ってきた、古代日本と深いつながりをもつ高句麗壁画古墳のユネスコ文化遺産登録が実現する素晴らしい年になるでしょう。
この事業に協力するために昨年、日本では「高句麗今昔を描く平山郁夫展」(NHK・朝日新聞社)が開催されました。本展示には、3年半にわたって描きためたスケッチ78点と本画5点を出品し、収益金は壁画の保存修復基金などに充てられます。 私は97年以来、これまで6回訪朝し、代表的な高句麗古墳壁画の江西大・中墓、安岳3号墳、水山里古墳など9基を視察しました。 高句麗古墳壁画にこだわる理由は、私の作品との関係の深さゆえであります。1967年の院展に私は「卑弥呼擴壁幻想」を出品しました。この作品は、邪馬台国の女王・卑弥呼の墓がもし存在していたら、こんなイメージになるだろうと想像し、幻想的な世界を描いたものでした。当時、この作品を描くに当たって、高句麗壁画を研究し、卑弥呼を描く際には水山里古墳壁画の女性像を参考にしたのです。そして、それから5年後の72年、偶然にも、高句麗壁画の強い影響を受けた高松塚古墳が発見され、その模写班の責任者に就任したのです。その時、運命的なものを感じたのでした。 日本と朝鮮にはいまだ国交がありません。しかし、古代日本のあけぼのに、朝鮮の故地、高句麗にたいへんお世話になった歴史的事実を忘れてはなりません。わが国初の仏教寺院・飛鳥寺の初代管長となった僧・慧慈は高句麗から渡来し、聖徳太子の外交顧問として、国家建設に大変にご尽力を頂き、さらに飛鳥大仏の造立に黄金300両が、高句麗から推古天皇にお祝いとして届けられたと日本書紀に記載されています。このような日朝の悠久の歴史に思いを寄せ、さらには東アジアの平和と南北朝鮮の統一への祈りをこめて高句麗壁画のユネスコ文化遺産登録に協力できることを大変うれしく思います。 |