閑話休題

国見VS鹿実

サッカー超えた深い思い


 今年の全国高校サッカー選手権大会は、国見(長崎)高校の連覇で幕を閉じた。ウリハッキョの出場がなく、会場に足を運ぶまでは至らなかったが、高校生の熱戦に一喜一憂した。

 中でも圧巻だったのは、準決勝の国見―鹿児島実業戦。両校とも高校サッカー界の雄。今年で12年の歴史を刻むイギョラ杯サッカー大会の常連校でもあり、朝高との交流では、帝京高校と並んで実績を積み上げてきた。

 毎春、この大会を欠かさず取材してきたが、やはり印象深いのは、国見・小嶺総監督、鹿実・松沢監督の桁外れのスケール。排他的な風潮が強い時代にあっても、強い信念とリーダーシップを発揮して、自らバスの運転をしながら、はるばる九州から東京朝高へとチームを引率してきていた。

 両監督ともピッチの上では、生徒が震えるほどの怖い存在。しかし、1歩そこから出ると、柔和な教育者の顔に戻る。

 ダンプの愛称を持つ小嶺総監督。3年前から校長先生も兼ねるが、30年もの間、社会科教諭として教壇に立ってきた。「日本は今、平和で豊かな時代です。だからこそ、日本の過去を詫びなければならない。朝鮮人を強制連行した酷い事実を忘れてはならないのです。そのことを授業で教えています」との言葉が印象的だった。

 松沢監督も3年前、大阪朝高がインターハイに初出場を決めた時、「在日朝鮮人は異国での苦しみに耐え、真っ向から勝負し、己に打ち勝ってきた。その遺伝子が朝高サッカーに脈々受け継がれてきた」と称えた。サッカーを超えた深い思い。試合を見ながら、そのことを思い出した。(粉)

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