2002年日本経済
専門紙・誌の動向分析

ペイオフ解禁、続く金融不安


 先行き不透明な日本経済。2年連続のマイナス成長は確実で、失業率増加にともなう雇用不安も増大している。4月にはペイオフ(定期預金などの払戻保証額を元本1000万円とその利息までとする措置)が解禁され、金融情勢の行方も注目される。日本で暮らす同胞たちにとって、日本経済の行方は日々の生活と直結するだけに目が離せない。日本の各専門紙・誌が分析する今年の経済動向についてまとめた。

GDPマイナス0.6%

 「週刊エコノミスト」迎春合併号は、民間シンクタンク・金融機関の2002年度の経済予測を紹介している。

 それによると、日本経済は2年連続のマイナス成長を続ける可能性が高い。24社のうち22社が、02年度の実質国内総生産(GDP)についてマイナスを予測した。最も悲観的なのが大和銀行総合研究所のマイナス1.3%、最も楽観的なのはプラス0.4%の三和総合研究所。平均すると、マイナス0・6%程度だ。

 一方、日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」のマクロ経済予測は、02年度の経済成長率を実質マイナス0.2%と見ている。いずれにせよ、2年連続のマイナス成長となるのは確実のようだ。

 背景には、経営不振企業の整理が進む中、企業倒産や失業増が景気の重しになるということがある。

 デフレの進行も歯止めが利かない状態だ。卸売物価は14カ月連続の下落。先の「エコノミスト」の記事でも、三菱総合研究所はすでにデフレスパイラルに入ったと判断している。つまり、「物価下落→企業収益の悪化→リストラ・賃下げ→消費縮小→物価下落」という悪循環である。

ワークシェアリング

 昨年、5.5%を記録した完全失業率だが、今年はさらに増加するとの見方が大勢を占める。

 日本総合研究所主任研究員の山田久氏のように、「02年7〜9月期に、完全失業率が6%の大台に乗ってもおかしくない」(「週刊東洋経済」新春合併特別号)と予想する向きもあるほどだ。「週刊ダイヤモンド」新春合併号が、働く男女1000人を対象に実施した調査でも、失業者が増えると答えた人が81.5%に上っている。

 失業回避策として、このところ論議されているのが、労働時間を減らして雇用機会を分かち合うワークシェアリングだ。

 ワークシェアリングは、正社員の中で仕事を分け合うドイツ・フランス型、パート雇用など労働形態の多様化を伴うオランダ型の2つのタイプがあるが、山田氏は「オランダ型のようにパート労働者も正規雇用者と同じ待遇にして、パートタイムで働く男性・女性が増えるなど、労働形態を多様化する形でワークシェアリングを普及させるのが望ましい」(「週刊東洋経済」)と指摘する。

 実際、オランダの失業率は80年代前半に10%を超えたが、パートタイムの雇用が増大し、2000年には2%台まで急低下した実績がある。

公的資金再投入

 小泉首相は4日の記者会見で、「金融危機を起こさないためにはあらゆる手段を講じる」と明言。「着々と不良債権の処理が進められている中で、無用の混乱を起こさないために政府としては大胆かつ柔軟な対策をとる用意をしている」と、公的資金の再投入も視野に入れた発言をした。

 3月末の決算期を前に、不良債権処理の重荷で息切れする金融機関が増加するのでは、との懸念から市場では金融不安が広がっている。

 預金保険法102条によると、首相は金融危機時には「金融危機対応会議」を主宰し、公的資金注入などの措置を取ることができる。破たん金融機関のペイオフ凍結の継続、公的管理措置も可能。ただし、小泉首相はペイオフ解禁を4月から予定どおり行うと強調しており、その場合の「あらゆる手段」とは、金融庁による大手行への特別検査の徹底、効率化・リストラの推進、新たな再編誘導などとなる。(日本経済新聞8日付)

 さて、そのペイオフの再延期はあるのか。結論的にはないとする見方が圧倒的だ。

 理由としては、

  @小泉内閣の構造改革路線の後退となり、政権の致命傷となりかねない

  A日本に対する国際的信認がいよいよがた落ちとなる

――ことなどがあげられる。

 とは言え、「週刊ダイヤモンド」は次のように指摘する。

 「金融庁の特別検査着手を受けて、大手14行は2002年3月期決算で軒並み不良債権処理額を積み増し、その額は6兆5000億円に達する見込みだ。予想外の大型倒産が相次ぎ、景気がさらに冷え込めば、不良債権の新規発生に歯止めがかからなくなる。…そういう緊急事態に、ペイオフ解禁を強行すればどうなるか。経営に不安を抱える金融機関からは、1000万円以上の大口だけでなく、小口預金も流出する。預金流出が続けば資金繰りが行き詰まり、金融機関がばたばたと倒れることにもなりかねない」

 「不良債権問題に対する不安をはらんだまま、ペイオフ解禁を強行すれば、全国各地で金融恐慌の引金を引きかねない」

 「週刊東洋経済」も、「予定どおり実行されれば、大手行でもダメージが予想される」としながら、「3月決算の数字次第では、大手行への公的資金再注入も現実味を帯びる」と分析している。

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