春・夏・秋・冬

 ほとんどの品物が開店から30分で売り切れてしまったという。昨年破たんしたスーパーマイカルの話だ。80%オフの在庫一掃セールをしたところ、ある支店では開店前から3000人を超える列ができたそうだ。破たん前にこうなってくれれば、とマイカル関係者は思ったかどうか

▼とはいえ、普段では考えられない安値だからこそ、消費者は数時間も並んで購入する。雇用不安による消費低迷はまだまだ続いており、物価下落もどこまで進むのか、予測がつかない。だから、景気回復に対する専門家の見方はおおむね悲観的だ

▼小泉政権の構造改革が進めば、足腰の弱い企業が倒産し、失業率の上昇も避けられそうにない。淘汰の中で生き残った企業は強い、勝ち組と負け組がはっきりするだろう、などとの見方もあるが、いずれにせよ、とばっちりを受けるのは雇われている側だ

▼雇用対策として、ここへ来て注目されているのがワークシェアリング。読んで字のごとく、労働を分け合うということ。これによって少しでも多くの人に雇用の機会が与えられれば、それに越したことはないだろう。ただ、企業にとって当面の賃金をどう切り下げるかという問題でしかとらえていないとの指摘もある

▼拓殖大学の長坂寿久教授は、「雇用問題というのは、人間とはどう生きるのかという問題。生き甲斐のある人生、働き甲斐のある仕事ができるようにするためにはどのようなシステムがいいのか、というところから発想して考えなければいけない」(「世界」2月号)と明快だ。ここに本質があるのでは。(聖)

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