医療−最前線
病院の「トック」
病院では闘病生活を送っている患者さんのなかで、正月ぐらいは自宅で過ごしたいという希望に添って医師の許可が出る患者さんに対しては出来るだけ自宅静養するようにしている。しかし、病状が芳しくなく、引続き投薬治療が必要な患者さんに対しては入院生活を続けるようにしている。そのような患者さんに対して病院側では、いくらかでも正月気分を味わっていただくために1月の1、2日の食事は、摂取可能な患者さんに限って正月の行事食で対応している。
日本で正月料理に欠かせないのがお雑煮だ。しかし、近年、もち米で作る日本の御餅は粘っこくて特に高齢者には負担が大きく、喉につっかかったりして窒息死する人が増えている。 そのような事情を考慮して、私の勤務する病院では今年から正月の行事食として朝鮮のトックを取り入れる事にした。 トックは朝鮮の正月料理で使用する御餅のことで朝鮮料理には欠かせないもの。トックはお米を原料にして作るもので、もち米で作る日本の餅のように粘っこくなくて高齢者の喉に負担をかける事が少ない。 朝鮮ではトックはテール(牛の尾)、鶏がらをスープのベースにし三つ葉、海苔、錦糸タマゴなどを加えて調理するのが一般的だ。病院ではカロリー計算もあるのでこのように出来ないが、お雑煮と同じく鶏肉でスープを作り野菜を添えて出すという。 これを機会に日本の患者が、朝鮮独特の正月料理を味わうのも良いではないかと思う。(李秀一・医療従事者) |